レースでもガソリンエンジンと互角の性能を発揮
ちなみに、世界初の自動車競走は、フランスで1894年に開催された。長距離を走り信頼性を問う競技で、パリからルーアンまでの126kmで争われた。参加は102台だったが、実際に出発したのは21台であった。蒸気機関自動車のほか、電気自動車、ガソリンエンジン車、あるいはガス自動車、水力自動車、電機・空気圧自動車といった多彩なエントリーがあったという。
最初にゴールしたのは、時速約18km/hで走ったドディオンの蒸気機関自動車だった。ところが、蒸気機関はボイラーを管理する専門の乗員が必要で、ひとりで運転できるガソリンエンジン車のプジョーが、到着は2番手だったが、優勝と判定された。
蒸気機関自動車は、蒸気機関車と同じように水を沸かして蒸気を作るボイラーの操作が必要になる外燃機関だから、走るために手間がかかる。それに比べ、ガソリンエンジン自動車は、燃やした燃料の熱をそのまま動力とする内燃機関であるため、カール・ベンツの最初のガソリンエンジン自動車も、妻のベルタがひとりで操作し、同乗した息子を連れて走れる手軽さがあった。
電気自動車も、手軽に操作して走れる自動車であり、ドイツのフェルディナント・ポルシェ博士が自ら製作した最初の1台は電気自動車だった。また、世界で初めて時速100km/hを記録したのも、ベルギー人のジェナッツィによる電気自動車である。
20世紀に入り、ガソリンスタンドが整備されるにしたがい、自動車といえばガソリンエンジン車という時代が訪れることになる。