じつはストリート仕様も計画されていた
ポルシェは最終的に、919ハイブリッドによるWECへの参戦を2017年で終了することになるが、その一方で進められていたのが、そのロード仕様となる、「919ハイブリッドストリート」の企画と開発である。
仮にポルシェがWECの表舞台から去ることがなければ、それは確実に現実のものとなったプロジェクトであったはずだが、これは究極的なポルシェ製ハイブリッド車のパフォーマンスを一般の、しかしながらそれなりのドライビングスキルをもつアマチュアドライバーに経験してもらうことを目的としたハイパーカーだった。
そのメカニズムは、サーキットに投じられた919ハイブリッドのそれとほぼ同様。カーボンモノコックや、2000ccのV型4気筒ターボエンジン、それに回生システムや前輪を駆動するエレクトリックモーター等々からなるハイブリッドシステムはすべて共通だったが、残念ながらその夢は現実となることはなかった。
システム全体の最高出力で900馬力を発揮したとされるパワーユニットは、もちろん現在においても十分すぎるほどに魅力的なパフォーマンス。エクステリアデザインは、ロードカーらしくややすっきりとしたデザインに改められたが、個性的なキャノピーの造形などからは、LMPH1車両がベースとなっていることは瞬時に理解できる。
4 in 1のコンセプトによるヘッドライトは919ハイブリッドのそれとはやや趣が異なるが、これもタイカンなど、現代の最新ポルシェ車の顔としてはもはやお馴染みの処理だ。ウイングが配されたことで、すっきりとした印象に変わったリヤセクションのデザインも、ストリートならではのもの。
実際にポルシェは2015年から2017年までル・マン24時間レースを919ハイブリッドで3連覇しただけに、このストリートが誕生すれば、それは数あるハイパーカーのなかでもとくに注目される存在となったはず。そのプランが幻のまま終わってしまったことは残念だ。