「オーナーは運転するべからず」のセンチュリーに大改革! 世の固定観念を覆したSUVタイプとGRMNの存在 (2/2ページ)

GRMNやSUVの登場で大衆化した超高級車

 こうした特別な存在価値、誰もが手にすることはできないエクスクルーシブなセンチュリーに異変(?)が起きたのは2018年のことだった。当時の豊田章男社長が、センチュリーGRMNを作らせ、自ら運転して公衆の面前に登場した。

 GRブランドといえば、不可触な超高級車ではなく、レーシングブランド、スポーツブランドの印象が圧倒的に強く、豊田章男氏が特別に作らせたセンチュリーGRMNは、THS-II(ハイブリッドシステム)を搭載する現行UWG60型をベースに、ドライバーズカー方向に振った仕様で仕上げられていたようだ。ご記憶の方がいるかもしれないが、同車は2019年の箱根駅伝から大会本部車両として使われていた。

 現在のところ、センチュリーGRMNは市販(商品化)されておらず、あくまで豊田章男前社長の試みと捉えられているが、2023年9月、このセンチュリーに驚くべきモデルが追加された。SUVタイプのセンチュリーである。

 興味深いのは、このSUVタイプのネーミングなのだが、公式には「センチュリー」と表記され、本来あるべき形態と考えられる従来のセンチュリーは、「センチュリー(セダン)」と表記されている。

 このSUV型センチュリー、車両の仕様を見ていくと、やはり優先席(というより乗るべき人)は後席に座る人物で、リヤシートはフルフラット化が可能になっている。VIPだからサルーンでの移動という固定観念は捨て、使用目的によってはSUVタイプのショーファーカーがあってもよいのでは、という考え方を具現化した車種設定と解釈できる。

 じつはこうした動き、いわゆるプレステージサルーンの本家であるロールス・ロイスのほうがひと足早く、2018年5月にSUVタイプの「ロールス・ロイス・カリナン」をリリースしていた。解釈の難しいモデルだが、やはり専属運転手によるショーファーカーとして企画されていた。かつてロールス・ロイスには、ドロップヘッドクーペが用意された時代もあったが、やはりこれもショーファーカーとして使用することが「正規」の運用方法だったという。

 余談だが、親会社がビッカースの時代、ロールス・ロイスとベントレーが双子車として存在した時期もあったが、棲み分けは明確で、やはりロールス・ロイスはショーファーカー、一方のベントレーはドライバーズカーとはっきり性格わけが行われていた。ロールス・ロイスは、やはり主役が運転してはいけないクルマなのである。

 豊田章男前社長の判断が効いてのことなのか、誰もがアンタッチャブルと思っていたセンチュリーに、ワンオフと呼べるGR仕様、そしてSUV仕様がカタログアップされる大きな変化が起きた。これも時代の流れとともに変化する価値観によって起こり得たことなのだろうか。

 そういえば、やはりサルーン(セダン)形態が絶対不変と思われていたクラウンに、クーペフォルムをもつクロスオーバーが新たに設定され、古くから保たれてきたクラウン像を一新する改革を見せたことは記憶に新しい。

 センチュリーに対して描く車両イメージも、時代とともに変わっていかなければならないのかもしれない。それにしても、GRMNの登場は衝撃的だった。


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