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たった1レースで1200本も用意! サスティナブルなタイヤも開発! スーパーフォーミュラにタイヤを供給するヨコハマの取り組みに圧倒された (2/2ページ)

たった1レースで1200本も用意! サスティナブルなタイヤも開発! スーパーフォーミュラにタイヤを供給するヨコハマの取り組みに圧倒された

この記事をまとめると

■スーパーフォーミュラでは全車ヨコハマタイヤを装着する

■性能はそのままに環境に配慮したタイヤ開発をレースを通して進めている

■タイヤガレージでは職人たちが全チームを徹底的にサポートする体制を構築している

世界最速クラスのマシンを支えるタイヤの秘密

 突然だが、皆さんはスーパーフォーミュラ(以下:SF)というカテゴリーをご存じだろうか?

 クルマに興味がある読者の方々ならさすがに名前くらいは知ってるだろう。かつて、F3000やフォーミュラニッポンなんて呼ばれていた、フォーミュラカーを使うひとつのカテゴリーである。

 なお、筆者は恥ずかしながらスーパーフォーミュラに関しては”超”がつくほどのにわか。正直いって全然知識がない。せいぜいわかっているのは、F1に似たようなフォーミュラマシンを使って、決まったエンジン(トヨタ製かホンダ製)を使用して、”タイヤはワンメイク”……ということくらい。それと、女子大生ドライバーのjuju選手が今年から参戦していることも把握している。あと、現在は日本のサーキットのみで行われている点も特徴だろう。

 そんなSFのマシンパフォーマンスは、世界規模で見てもなんとF1の次に高いといわれいる。ざっくり整理すると、「F1>SF>インディカー>F2>スーパーGT>WEC>F3」といった感じなんだとか。つまり、実質世界で2番目に速いカテゴリーのレースが、なんと日本を舞台に繰り広げられている。

 そんな世界最速クラスのフォーミュラーカーの足もとを支えるタイヤについて、激戦が続く2024年シーズン最終戦を前に注目しようと思う。

 SFで使われているタイヤは、写真を見てわかるとおりヨコハマタイヤだ。F1で全車ピレリが装着されているワンメイク制度と同じで、SFでは全車がヨコハマタイヤのフラッグシップブランド「ADVAN」のタイヤを使用する。よって、スーパーGTのようにタイヤメーカーによる差がSFにはない。

 このたび筆者が参加したのは、ヨコハマタイヤが20年以上続けているというメディア向けのタイヤ勉強会。内容云々の前に「20年以上やってんの!?」と驚いたのはここだけの話。会場はSFの第6戦富士スピードウェイ。主なカリキュラムはSF用タイヤにまつわる解説と、施設の見学となる。

 ちなみに、ヨコハマタイヤがSFにタイヤを供給を始めたのは2016年から。ヨコハマゴムでは製品作りにおいて「技術開発・ブランディング・人材開発」の3本柱を掲げており、その目的とSFにおけるタイヤサプライヤーとしてのかかわりがマッチしているとのことで、供給するに至った……とのこと。

 また、最近では自動車業界においてカーボンニュートラルやSDGsということに注力している傾向にあるのはご存じのとおり。そこでヨコハマゴムでは、SFの現場を通して製品の研究も積極的に行なっている。とくに、極限下で使われるレース用タイヤから得られるデータはとても貴重で、高速域における安定性とサスティナブル素材の相性などもレース現場からのデータをもとに、我々の使用する市販車用タイヤの開発に生かしているとのことで、SFへのタイヤ供給は、一見狭い世界の話に感じるが、蓋を開ければかなり壮大なプロジェクトとなっているのだ。

 ただ、レース用タイヤと市販車向けタイヤに求められる性能はまったく異なることも事実。ぶっちゃけSFのタイヤは、レースで走る周(時間)だけもてばいいので、市販用タイヤではあり得ないような、突き詰めた開発も同時に行なっている。一方で、レースシーンでも環境に対する配慮を優先する傾向に最近はあるので、2022年からは再生可能原料を使いつつ、極限のグリップを得られるという、一石二鳥なスペックを誇るレース用タイヤも研究・開発しているとのこと。

 しかし、これがまぁ大変。レースで供給できるほどの量産がまだできないという。それはなぜか。

 現在SFで使用されているタイヤは、1本あたり33%がサスティナブル素材で構成されている。一方でプロトタイプである、より環境素材を多く使った次世代のタイヤは、1本あたり60%までその比率を高めているそう。スペックに関してもグリップや耐久性も現在使われているタイヤとほぼ同等なので、レースに投入しても問題ないレベルというデータ取りもある程度できている。

 ただ、このタイヤに使われているサスティナブル素材はコストが非常に高いという。これをワンメイクタイヤとして導入すると、各チームの首を絞めることになりかねない(現状では価格が数倍レベルで上がるそう)。さらにもうひとつの問題が、素材の調達だ。世界中でサスティナブルだのSDGsだのといわれている影響で、安定した原材料の調達も難しいのだとか。極論、お金を払えば手に入るそうだが、そうなればコストも跳ね上がるわけで……現在ワンメイクタイヤとしてサスティナブル素材メインのタイヤを導入するのは、現実的ではないとのこと。

 レース用タイヤの開発は、とにかく速いタイムが出ればなんでもいい……なんてことはなく、さまざまな事情が複雑に絡み合った複雑な世界なのだ。

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