たった1レースで1200本も用意! サスティナブルなタイヤも開発! スーパーフォーミュラにタイヤを供給するヨコハマの取り組みに圧倒された (2/2ページ)

職人揃いのガレージが圧巻!

 皆さんはサーキットに足を運んだ際、とある建物を見たことがないだろうか。

 そう。タイヤメーカーの名前が書かれた倉庫的な施設だ。正直多くの人は、「普段閉まってるし何やるところなの?」と思ってる人も多いはず。

 てなわけで、レース用タイヤへの理解を深めた流れで、この日はヨコハマタイヤの看板を掲げる施設にも潜入してみた。

 この日は先述のとおりSF第6戦。足を踏み入れると、何やら機械がずらり。ただ、ひと目見てすぐにわかった。ここはタイヤガレージだ。なんせ、タイヤチェンジャーやバランサーが、タイヤ専門店もビックリな数だけ設置されている。中央にはローラー付きのスロープが設置され、手前から奥にタイヤを流して各セクションへタイヤを渡せるような工夫もされていた。

 ここは、SFに参戦する全チームのタイヤをサポートする拠点として機能しており、取材中も次から次へとチームスタッフがホイールやタイヤをもち込み、組み替えなどを依頼していた。

 にしても、作業スピードがえげつない。市販品のハイグリップタイヤを昔チェンジャーを使って組んだことがあるが、かなりの重作業だったと記憶している。スポーツ系タイヤの一部やランフラットタイヤは組むのが難しい傾向にある。その知識をもっている側からすれば、SFで使われるようなタイヤなど想像したくもない。

 しかし、そこはヨコハマブランドを背負う職人たち。組み替えからエアの補充、バランス出しまで各パートの担当者が無駄な動きを一切見せずにスパスパと組んでいく。見た目こそ人間だが、まるでプログラムされた機械のようである。ちなみにホイールは各チームのもち物なので、タイヤを外したらホイールは返却されるとのこと。レース前の準備の日であれば、ホイールを預けておけば組んでおいてくれるらしい。

 そんなヨコハマタイヤのタイヤガレージ、営業時間は9時から17時とのことだ(もちろん関係者以外利用不可)。

 所要時間は各パート3分前後の作業時間なようで、1本組むのに10分かからないという。ちなみに1番気を遣う作業はバランス取りなんだそう。あの速度域で走ると、ちょっとしたジャダーが物凄く気になるんだとか。ウエイトに関しては我々が使うような一般的なモノを使っている。気になるタイヤサイズはフロントが「270/620R13」、リヤが「360/620R13」となる。F1では18インチタイヤが導入されているが、SFではまだ13インチとなる。ただ、タイヤが極太なせいか13インチとは思えないくらい大きく見えるのが面白い。

 スタッフはタイヤの組み替えなどを行うスタッフが10名とデータと睨めっこするエンジニアが8名ほどの計18名ほど。SFやスーパーGTなどのビッグレースは基本的に同じメンバーで全戦帯同している。

 機材やタイヤを載せたトラックに関しては毎戦7台ほど使用しているそうだが、もってきているタイヤの量がこれまた半端ない。レースによって多少前後するそうだが、SFの場合は1戦あたり、ドライが500〜600本、ウエット用が700本前後という、工場ごとやってきたかのような数を用意しているとのこと。

 ウエットが多めな理由は、「消耗が早いのと、ウエットが必要なときは全チームが必要なときでもあるので、速いペースで各チームに消耗されて在庫切れ……なんてことがあってはなりません。なのでドライより多いのです」と語ってくれた。

 こう聞くと、タイヤに対する力の入れようは尋常ではないと思い知らされる。まさに知れば知るほど、その次を知りたくなうような、とても興味深い世界が広がっていた。

 なおこの日は、トヨタ自動車会長「モリゾウ」こと豊田章男氏や、HRCの渡辺康治社長、そして、JRP会長を務める「マッチ」こと近藤真彦氏が集結。現行車両であるSF23の開発車両「赤寅」を近藤氏がドライブするという、激レアシーンが見れるデモランも行われ会場は大いに盛り上がった。

 デモランを行ったこのマシンに装備されていたタイヤは、序盤で語った再生可能なサスティナブル素材を60%使用したスペシャルタイヤだったそうだ。

 2024年11月9日(土)〜10日(日)で開催されるSF最終戦。ぜひ、ヨコハマタイヤにも意識を向けてレースを見てもらえたら幸いだ。


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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