使用状況に合わせたタイヤのチョイスが望ましい
こうしたミスマッチングの要素のなかで、もっとも簡単に修正できる要素が装着タイヤの変更だった。クロカン4WDは、荒れた不整地を走破するのに適したタイヤが装着されるケースが多い。こうした路面に対しては、トレッドブロックのゴツゴツした不整地用のパターンをもつタイヤが適している(初代パジェロは、小型トラックなどで使われるリブラグパターンのタイヤを装着)。
もちろん、舗装路も走れるが、舗装路主体、あるいは高速道路走行まで考えると、ゴツゴツしたトレッドブロックのタイヤより、路面との設地面積が大きく平坦なトレッド面、排水性能を考慮した縦方向の溝、というパターンが合っている。舗装路では、こうしたパターンのほうが、乗り心地がフラットで静か、舗装路を安定して走ることができるからだ。
クロカン4WD用のタイヤとして、舗装路、それも高速道路での使用を主体に作られたものがハイウェイテレーンと呼ばれる仕様だ。舗装路のなかでも、連続した高速走行を主眼に置いたタイヤ作りになっている。逆に、不整地、あるいは泥濘路での走破性に主眼を置いた仕様がマッドテレーンだ。
ハイウェイテレーンが不整地や泥濘路、マッドテレーンが舗装路や高速道路をまったく走れないわけではなく、どちらもそれなりに走破することはできるが、適合路面の向き、不向きでいえば、その性格は明らかだ。
一方、せっかくのクロカン4WD、高速道路から荒れた不整地までまんべんなく走れる性能のタイヤがほしい、というユーザーに応えた仕様がオールテレーンだ。どの路面コンディションでもそれなりに走ることはできるが、逆にいえば、ピタリと適した路面コンディションはなく、とりあえずどんな路面でも無難に走ることができる、というオールラウンダータイプだ。
ユーザーとしては、自分の用途に応じたタイプを選ぶことが最善の選択肢だが、その前に、装着するクルマがクロカン4WDということを再認識しよう。クロカン4WDは、荒れた不整地や泥濘路を走り抜けるために作られた車両で、本来の駆動パターンはパートタイム4WD方式だ。
この方式は、ふだん(負荷の低い路面、平坦な舗装路など)の走行では2WD(ほぼFR方式)を選択し、タイヤの接地状態が不安定な不整地、あるいは路面μが低くなる泥濘路や積雪路で、安定した走破力を得るため4WDに切り替える方式だ。4WDは前後直結の駆動方式となり、4WD方式のなかでも最大の駆動力を発揮する。
それだけに「走る」だけなら、路面状態にかかわらず「力業」で走り抜けることも可能だが、一歩間違えるとアクシデントにつながる可能性が高い。「走る」は4WDのトラクション性能によってなんとかなるが、「曲がる」「止まる」はタイヤの性能に依存するからだ。タイヤ選びの際に、このことを忘れないでほしい。