ヘッドアップディスプレイの使い勝手は工夫次第
少し整理すると、ヘッドアップディスプレイの機能面でのメリットというのは、運転しながら知りたい情報がそこにあり、それを素早く小さな視線移動で確認できることだ。そのありがたみは車速が高まるほど増す。日本ぐらいの速度域よりも、もっと速い速度域で、たとえばアウトバーンを200km/h超で走るときなど、メーターまで目線を落とすのがはばかられるような状況でも、前方から目をそらすことなく走れるようになる。
また、どのように表示されるべきかは、日本自動車工業会(JAMA)の規定により、「注視点」という運転時に視線の集中する位置よりも手前の視界を妨げない位置とする旨が、表示してもよい内容も含め定められている。
それでも気になるという人におすすめしたい方法がいくつかある。ひとつは設定を調整して明るさを下げること。じつはこれだけでも、かなり変わるはずだ。位置についても、できるだけ低くしたほうが注視点から離れて煩わしく感じにくくなる。
それ以外にも、表示のバリエーションや項目の選択をいくつか試してみて、もっとも煩わしく感じられないものを選ぶことだ。この選択によって、見え方がぜんぜん違ったりするので、好みにあうものを探すといい。
それでも気になるなら、意識的に表示をあっても見ないように心がけるといい。ヘッドアップディスプレイの文字は、ドライバーの目から15~20mほど先にあるかのように表示されるのが一般的だが、なかにはかなり大きく表示されて、どうしても視野に入ってくるものもある。
もちろん、むしろどんな状況でも見えるようにと作られているわけだから、それを見ないようにするというほうが筋違いなわけだが、それでも目の焦点を合わせないように心がけると、意外と気にならなくなり、それでいて情報はなんとなく潜在意識のなかに入ってきて、どれぐらいのスピードで走っているか等を常に把握できていたりするものだ。ぜひ試してみるといい。
逆に、見たいのに見えないケースのほうが難しい。フロントウインドウに投影するタイプならなんとかなるが、パネルに映し出すタイプは表示が手前にありすぎて目のピントを合わせにくいと感じるケースが年配の人に多いようだ。これは慣れるしかない。
デジタルの時代になり、ヘッドアップディスプレイだけでなく、メインの液晶のメーターや大きなセンターディスプレイも含め、これまでにも増してさまざまなことが表示できるようになったのはよいことだが、このところちょっとエスカレート気味にもなっているのも否めない。
ドライバーにとって情報過多になり、それが度を超えると、安全のためのものが、かえって周囲の危険を見落とすことにつながってしまうと、それこそ本末転倒だ。そのあたりはまさに識者により議論もされているところなので、徐々に改善されてよいものに進化していることには違いない。
とにかく、せっかく付いている有益な機能を使わない手はない。イヤだと感じた人も、どうすれば使えるか、いろいろ試してみる価値のある装備であることは念を押しておきたい。