さまざまな事情が折り重なるボディ色選び
軽自動車に関しては届け出済み未使用軽中古車が多く流通している。使用していない新車にナンバープレートだけつけたもので、未使用中古車を購入する様子を見ていると、さまざまなメーカーの、さまざまな車両が展示してあるので、メーカーや車名にこだわらず、スタイルやボディカラーで自由に選ばれている光景を目にすることも多い。
また、傾向としては日本車であっても標準色の設定が極端に絞られる傾向も目立ってきている。たとえば日産エクストレイルでは12色あるなかで標準色、つまり追加料金のかからないボディカラーは2色しか設定されていない。それでもエクストレイルぐらいの価格帯のモデルでは、オプションか否かにこだわらずにボディカラーが選ばれているようだが、12色のうち2色のみが標準色と聞くと一瞬躊躇してしまう。12色もあるので有料か否かに関係なく、やはり納期にボディカラーが影響するのは避けられないようである。
ホンダWR-Vでは5色あるうち、クリスタルブラックパールのみ標準色となっている。WR-Vは最廉価グレードが軽自動車のカスタム系モデル並みの支払い総額になる割安感も魅力で人気の高いモデル。そのキャラクターもあるのか、ボディカラーの選択は唯一の標準色であるクリスタルブラックパールに集中しているようだ(最廉価グレードではとくにその傾向があるようだ)。
ただ、ここへきて在庫(先行発注モデル)が中間や上級グレードが多くなってきているようで、それらグレードではボディカラーによる納期の差はそれほどなく、「オプションカラーのほうが早い」といったような話も聞いており、街なかでは黒系色以外もよく見かけるようになった。
輸入車の世界では「標準色はひとつ」というようなことは珍しくない。日本国内でもリクエストはできるようだが、本国のヘッドクォーターがセレクトして船に乗せた車両、つまり在庫販売が原則となるのが輸入車。そのため、ドイツ系ブランドのなかにはホワイト系カラーを標準とし、これをメインに販売している。
過去には「ドイツ車ならシルバー」という話もあったが、いまではシルバー系のほうが再販価値は下がりやすいという話も聞いたことがある。それほどブランドによっては新車でも中古車でも白系カラーメインで流通しているのである。もちろん数千万円レベルの高級車ではその例にあてはまらないが、普及クラスでは自ずとボディカラーの選択は限られるようである。
ただ、「本国が選んだ」と前述したとおり、売れ筋カラーだけではなく、「えっ」と思うようなボディカラーのモデルも輸送船のなかには含まれるようである。また、新型コロナウイルス感染拡大がひどかったころは、輸入車といえども受注生産方式をとっていた量販ブランドもあり、そのときは「いまなら納期のバラつきはありませんから、好きなボディカラーやオプションが選べますよ」といわれたこともあった。
ちなみにアメリカでは、過去に比べれば派手なボディカラーは鳴りを潜め、過去にはあまり見かけなかった白系なども目立っている。かつてはソリッドレッドなど派手な色を車種に関係なく好んで乗っていたのだが、一時期「そのようなボディカラーに乗る人は事故を起こしやすい」となり、ボディカラーで保険料が異なるようになったそうで、そこから地味めな色に乗る人が増えたとも聞いている。
日本では本人の好みなどの前に商談で、「売れている色は?」とか、「再販価値が期待できる色は?」としてボディカラーを絞り込む傾向も強い、さらにセールスマンも「納期のより早い色ですと……」と勧めてくることもある。
「なんの制限もなく好きな色を豊富なバリエーションのなかから日本でも選べたら」と考えたとき、それでも選択される色は偏るのか、それとも同じクルマでも色とりどりの車両が街なかを走るのか、国民性を考えると前者となりそうな気がする。