アメリカの自動運転タクシーはIT企業が主導する
ラスベガスを数日グルグルまわり、ロサンゼルス地域に戻ってきて、空港近くのいつものホテルにチェックインした。そのあと近所を散歩していると、筆者が初めてロサンゼルス地域を訪れた35年前からあった自動車修理工場跡地にBEV(バッテリー電気自動車)の充電ステーションができていた。
そこはパブリックなものではく、契約者限定との看板があった。散歩からホテルへ戻るときに再び充電ステーションを訪れると、ジャガー Iペース(BEV)ベースの自動運転タクシーが多数停車して充電していた。
車両にあった「Waymo」というロゴを頼りに調べてみると、グーグル系の自動運転タクシーサービスということがわかった。Waymoは2024年3月からロサンゼルス地域でサービスの提供をスタートさせている。ただし、車両をみると完全無人というわけではなく、運転席にはやはり「安全運転手」と思われるスタッフが乗っていた。
前出の充電ステーションも単に充電器が置いてあるだけではなく、安全運転手の休憩室のようなものも用意されていた。さすがに広大なロサンゼルス地区全体をカバーすることはいまのところ行わず、サービスエリアはまだ限定されているとのことであった。
日本でニュースを見ていると、アメリカでの自動運転タクシーサービスでは、事故などのトラブルが頻発しているという話題が目立っている。しかし、全米単位では、実証実験開始や正式サービス開始などは拡大の一途を辿っている。
公道での実証実験についても、日本のように「失敗は許されない」というような価値観ではなく、「ある程度のリスクは想定内」という価値観の違いがあるようだが、中国でも自動運転タクシーの運行は急速に進んでいるので、その意味でも実証実験など、普及が足踏みしないのかもしれない。アメリカではアマゾンやグーグルなど、自動運転タクシーの開発を進める企業が子会社などを立ち上げ、直接実証実験や実験的ともいえる正式運行を行っているところも注目できる。
日本では「日本式ライドシェア」のように、自動運転タクシーについても既存のタクシー事業者を絡ませて自動運転タクシー正式導入へ向けたプロセスで進められることになるだろう。
日本では自動運転タクシーやバスというと、「働き手不足対策」などとなるが、アメリカではタクシー業界とは関係ない、いまをときめくIT系企業などが「こんな未来になれば便利だろう」というワクワク感というものが開発の背景に強くあるように思える(見えてしまう)。
日本とは異なり、タクシーにせよ、ライドシェアにせよ、「有人(運転士)の公共移動手段ではなんらかの犯罪に巻き込まれるかも」というリスクがかなり高いのも事実で、そのリスクを排除してより使いやすい移動手段にしたいという思いもあるのは間違いない。日本でも働き手不足対策は利用者の利便性維持のためともとれるが、主語としては「事業者支援」というものが優先しているようで、その意味では筆者個人は違和感を覚えている。