日本仕様に対する気合いの入れ込みは半端ない
かつて初代バレーノは、ほぼインド仕様のまま日本に導入され、4WD車も設定されなかったことから、フロンクスのベースとなっている2代目への世代交代(2022年)を待たずして2020年に日本での販売を終了している。その反省も少なからず、フロンクスの日本仕様には込められているのかもしれない。
操縦安定性・乗り心地に関するさらなる詳細は、四輪車両運動性能評価・制御設計部車両運動性能評価課の向畑信幸さんと、四輪車両運動設計部サスペンション設計課の高藤裕介さんが説明。インドなどと比較して良路が多く速度域も高い日本仕様では、運転の楽しさだけではなく、後席の快適性と直進安定性の両立を目指して開発されたことが、とくに強調された。
それらを実現するために、スプリングやダンパー、タイヤのセッティングを変更し、段差通過時の突き上げを抑制。ADAS装着のため日本専用品とされた電動パワーステアリングも、中立付近のアシスト量を減らして中立位置を強調したうえ、ホイールの締結穴を海外仕様の4穴から5穴に変更して、高速走行時の直進性と操縦安定性をともに高めている。
フロンクスの大きな特徴となっている内外装デザインは、四輪デザイン部の加藤正浩さん、遠藤拓磨さん、江口奈津美さんの説明によれば、エクステリアが機能部品を除いてグローバルで共通化されている一方、ブラック×ボルドーのインテリアはその配色を含めて表皮が大きく異なるとのこと。
実際に海外仕様の写真と見比べてみると、座面と背もたれのメイン部がいずれもブラックであることを除けば、日本仕様はブラックとボルドーの配色がほぼ反転している印象だ。また、表皮も日本仕様はメイン部がファブリック、それ以外がレザー調合成皮革のコンビネーションなのに対し、海外仕様はフルファブリックとされている。
インパネ加飾も一部異なり、日本仕様は上段が高輝度シルバー、中段がパールブラック、下段がボルドーとなっているのに対し、海外仕様は中段がツヤ消しシルバーに。また、ドアトリムも日本仕様に対し海外仕様はボルドーの面積が広く、かつドアハンドル加飾も日本仕様のパールブラックに対し海外仕様はツヤ消しシルバー。アクセル&ブレーキペダルにステンレス製プレートが装着されるのも日本仕様ならではだ。
全体的には派手さや力強さを重視した海外仕様に対し、日本仕様はやや控えめながら質感の高さを重視した色使いになっているといえるだろう。
日本仕様のフロンクスは、これほどまでに多くの箇所が「日本専用」とされているうえ、安全・快適装備も充実。価格もFF車で254万1000円、4WD車で273万9000円と、割安感の強い設定となっている。発売時点で先行受注はすでに9000台に達しているというが、さらなる大ヒット作となったとしても、何ら不思議ではないだろう。