R32 GT-Rの「EV」を日産がお披露目! いかにR32 GT-Rの走りを実現するかにこだわり抜いた開発ストーリー (2/2ページ)

30年後にも楽しめるR32 GT-Rを目指して

──SNSではR32を解体するシーンまでありました。EV化にあたって、苦労したポイントなどありますか。

平工:R32を作った当時はCAD(コンピュータ設計支援システム)がなく、最初は各部の正確な3Dデータを作成しなければなりませんでした。紙の図面も少なかったので、エンジンベイの寸法など、あらゆる計測をしなおしたのです。ちなみに、解体にあたってEV化で不要となったパーツはネジ1本にいたるまで保存してあり、元どおりのR32 GT-Rに再生可能としています。

──モーターとバッテリーを搭載することで、R32とは車重や前後バランスなど変わっていますか。

平工:詳しくはお話しできませんが、当然車重は増えています。しかし、バランスはむしろ向上しています。また、重量は増えたもののパワーウェイトレシオ、そしてトルクウェイトレシオについてもR32とほぼ同じく仕上げています。R32の車体は(現代の基準からすると)とても小さく、バッテリーを床下に収納するといったことができなかったので、リヤシートを外して搭載することになり、残念ながらオリジナルと違って2シーターとなってしまいましたけどね。

──オリジナルと違うといえば、ホイールサイズが16インチから18インチへと拡大されました。

平工:車重が増えたために、ブレーキを強化する必要があったのです。せっかくなら、R35でも使っているブレンボを使いたいとなったのですが、どうしてもオリジナルのデザインは活かしたいと。そこで、一緒に取り組んでいたデザイナーが18インチ化を実現してくれたのです。デザインだけでなく、中空スポークなど機能的にもR32と等しく、当然大径のキャリパーにも対応しています。

──R32 EVは音についても再現されているとか。

平工:これも詳しくはお話しできませんが、R32オリジナルの音をとてもリアルに再現できたと思っています。音振を担当した技術者のこだわりが凄まじく(笑)、私でさえ理解不能な領域で頑張ってくれました。ぜひともご期待いただきたいポイントです。

 いまだベールに包まれているところは少なくないものの、平工さんの言葉からR32 EVがただのコンバートではないことをご理解いただけただろう。

 インタビューの最後に、30年後の人がR32の走りを体感できるとなると、平工さんは「R32 EVはちょっとしたタイムマシンのようですね」と愉快そうな笑みを見せたのが印象的だった。さらなるディテールは近いうちにご紹介できるので、ぜひR32 EVにご期待いただきたい。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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