「わっ、AE86の再来か!」と熱狂するも蓋を開けたら期待はずれ……「アルテッツァ」は何がダメだったのか? (2/2ページ)

いろいろと詰めが甘かった

 グレードは直4エンジンのRS200と直6エンジンのAS200があり、とくに最初はATのみだったAS200の直6エンジン搭載モデルのタイヤは、195/65R15を基本とするコンフォートタイヤを履くことから、上級ラグジュアリーセダンというキャラクターとなり、FRスポーツセダンという期待値から離れてしまったのも事実。RS200では215/45R17という走りに振ったサイズとなっていた。

 一般ユーザーなら、そのあたりはあまり気にしなかったかも知れないが、ライトウエイトな「AE86の再来」と勝手に期待したスポーツセダンユーザーにとっては、アルテッツァのスペックを見て、「ちょっと重すぎるんじゃね」と思って当然だった。

 たしかに、2リッター直4の3S-GE型ユニットはチタンバルブ、デュアルVVT-i(可変バルブタイミング・リフト機能)を備え、200~210馬力ものスペックをもっていたものの、実際、エンジンは高回転・高出力型で、ユーザーによっては低速トルク不足、低速でのアクセルレスポンス不足を指摘した声もある。

 期待された新開発6速MTは、6速をオーバードライブとした燃費にも気遣ったギヤ比、スポーツドライビングのポイントとなる2-3速ギヤのスポーティじゃない開きもあって(マイナーチェンジでファイナルを4.1から4.3に変更し、ローギヤード化した)、とにかくエンジンをまわさないとつまらない(!?)特性に仕立てられている……という評価もあったのだ。

 だから、AE86に熱狂したユーザーにしてみれば、車重増を含め、アルテッツアは期待外れのクルマになってしまったということになる。そこが、1代限りで消滅した理由のひとつといえるかも知れない。1990年代後半は、ホンダ・オデッセイ(1994年~)の登場によって、空前のミニバンブームでもあったわけで、セダンタイプに光が当たりにくくなった時代でもあった。

 もっとも、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員たち、つまりクルマの専門家に評価されたクルマであり、根っからのAE86ファン以外にとっては、トヨタからの念願のコンパクトFRスポーツセダンの登場、AS200の直6エンジンの気もちよさ、ラグジュアリーセダンとしてのキャラクターに共感した人も少なくなかったはず。そして、直6エンジンはアルテッツアベースのワゴン、ジータとの相性もよかったように記憶する。

 では、現在のアルテッツアの中古車市場はどうなっているのか? 今では新車で手に入れにくい6速MT車を中心に、ドレスアップ、チューニングを行ったクルマが少なくなく、20年以上前のクルマにして100万円台~が中心。ジワジワと価格高騰中だ。いい方を変えれば、中古車で軽く200万円をオーバーし、300万円もありうる、今となっては伝説の希少車種のAE86よりは、当時のコンパクトFRスポーツセダンとしては買いやすいともいえそうだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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