実用性にはほど遠いけどロマンの塊! バケモノみたいな「16気筒エンジン」を積んだクルマはやっぱり見た目も強烈だった (2/2ページ)

近代にも存在した16気筒エンジン搭載車

バイクレーサーならではのW16気筒

 1995年におそらくは1台だけ作られたヒメネス・ノビアW16は、その名の通りW型16気筒エンジンを搭載した夢のようなマシンでした。

 作ったのはフランスでバイクのレースに出場していたラモン・ヒメネスで、当時のルマンGT1クラスへの出場を目指していたそうです。で、バイクに乗っていたというのがミソで、W16エンジンのベースはヤマハFZR1000というバイクの並列4気筒エンジンなのです。

 1リッターの4気筒エンジンを4基、4列のシリンダーが並ぶことになり、元が5バルブなので合計80バルブになったというややこしさ(笑)。ただし、フォルクスワーゲン製W16とは異なり、ふたつのクランクシャフトを使用しており、一部の専門家は「4列のシリンダーがふたつのVに配置されたレイアウトは、他のWエンジンのレイアウトに適合しない」とされ、真のWエンジンとは認められていない模様。

 それでも、完成したW16は567馬力/10000rpm、432Nmのトルクを発生し、60mph (97km/h) まで3.1秒で加速し、1000mのスプリントを19秒でこなしたとされています。

 これだけのパフォーマンスだったにもかかわらず、ノビアがル・マンにエントリーできなかったのは、フランス政府に対して衝突試験のデータを提出できなかったからだそう。つまり、実験用の1台を作る手立てがなかったという悔しい結果です。

 なお、ヒメネスはノビアの開発に10年の歳月を費やし、かかった費用は85万ドルを越えるものだったとのこと。ですが、ノビアの発売価格は30万ドルと設定されていたようで、なかなかのバーゲンセールかと(笑)。それにしても、ひとりのバイクマニアにしてはすごいものを作ったと、16気筒エンジンよりも驚いてしまいます。

昭和世代の16気筒は迷わずチゼタ!

 16気筒と聞くと、脊髄反射的に「チゼタ!」と喜色を浮かべるのは昭和40年代生まれのデフォ(笑)。それだけ1991年のチゼタV16Tのデビューは印象深いものだったのです。

 クラウディオ・ザンポッリというイタリア人オーナーと、イタロ・ディスコでお馴染みのジョルジオ・モロダーの出資によって生まれたプロジェクトなので、チゼタ・モロダーV16Tというのが正式名。最後のTは横置きされたエンジンと、垂直に搭載されたクラッチ/ミッション/デフがT字となることから付けられたもの。

 90度のV16エンジンは6リッター、DOHC 64バルブで最高出力は550馬力、最大トルクは55.0Nmであり、最高速は328km/h、0-100km/h加速:4.2秒とスーパーカーらしいパフォーマンスを発揮してくれます。このエンジン、当時は開発にランボルギーニのスタッフが多かったことからジャルパなどで使ったV8をつなげたのではないかと、まことしやかな噂が流れたものです。

 また、スタイリングを担ったのがマルチェロ・ガンディーニで、当時のランボルギーニを所有していた「クライスラーからダメ出しされたディアブロ向けスケッチを元にした」とのコメントも。

 つまり、ザンポッリはランボルギーニのスピンオフテクノロジーや、ガンディーニのボツデザインをちゃっかりいただいたというか、巧みに利用したと考えられるわけで、クライスラーがオーナーでなかったら、ランボルギーニから「V16横置きミッドシップのミウラEVO」なんてモデルとして登場していた可能性だってなきにしもあらず。というか、筆者がザンポッリなら「本当はミウラの名でランボから売られるはずだったんですけどね」みたいなセールストークかましますけどね。

 その証拠になるかわかりませんが、当時のチゼタV16Tは20台そこそこ作って倒産しているものの(モロダーが抜けて資金難に)、ザンポッリはファミリービジネスとしていまもカリフォルニアでV16Tのオーダーを受付けているのです。そう聞いて、トゥールビヨンよりワクワクしてきた方は、筆者を含め昭和40年代生まれに違いないでしょう(笑)。


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