デコトラは日本の文化として認知されている
とはいえ『トラック野郎』のような内容ではなく、デコトラは物語の間をつなぐ程度のちょい役に過ぎなかった。しかし、このような大きな映画にデコトラが起用されたのは、単なる偶然ではない。アメリカの制作サイドから、映画に「日本のデコトラを出演させたい」という要望が寄せられたというのだ。デコトラが日本の文化であるということは、アメリカでも認知されている。その証であるとさえいえるだろう。
ちょうど東映京都撮影所で働いていた人物の周辺に、デコトラ愛好家たちのクラブ「ロンサムロード」に在籍していた人物が存在したため、クラブの会長車を含めた実在するデコトラたちが映画のロケに協力したのである。
とある工場の敷地内で追い詰められた主演のマイケル・ダグラス。拳銃を構えるそんな彼の背後から、クラクションとともにパッシングをしながら襲いかかってくる日野スーパードルフィンの大型ダンプ。映画の予告編にも抜粋されているシーンであるだけに、印象に残っている人は多いだろう。そのクルマこそが、デコトラクラブ「ロンサムロード」の会長(当時)をつとめた、三木清美さんの「鬼若丸」だった。
2021年に開催された東京パラリンピックの開会式では、日本を代表するギタリスト布袋寅泰さんとともに、デコトラを模倣したステージが全世界に公開された。改造車がモチーフでありながら、国を挙げた大きな舞台でデコトラが起用されるというにわかに信じがたいような展開となったのだ。それほどまでに、デコトラは日本が世界に誇る独自の文化として根付いているのである。
そんなデコトラに対する規制は年々厳しくなっていくばかりではあるが、世界に周知されているほどのデコトラ文化の灯を消すことなく、これからも変わらず維持し続けたいものである。