WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

「警告!」じゃなくて大惨事を防ぐため! トラックドライバーがもつ「イエローカード」ってなに?

「警告!」じゃなくて大惨事を防ぐため! トラックドライバーがもつ「イエローカード」ってなに?

この記事をまとめると

■トラックには「イエローカード」が存在する

■危険物を運搬するドライバーは「イエローカード」を携帯している

■「イエローカード」の用途や記載されている内容について解説

万一の事故の際に役立つ内容が書かれている

 トラックには「イエローカード」が存在する。これは、「ドライバーが何らかの違反を起こした際に出され、2枚目のときには赤いカードに変わって免許が取り消しになる」というものではない。サッカーやラグビーといったスポーツからイメージするものとは違って、警察などの取締機関が発行するといった類ものではないのである。

 このカードは、危険物、化学物質、高圧ガスなどを運搬するドライバーが携帯し、万一事故が起こった際に消防隊などに荷物の情報を伝えるためのカードだ。黄色い色をしていることから「イエローカード」と呼ばれているが、「緊急連絡カード」とも呼ばれている。

 タンクローリーやトラック、トレーラーといった輸送車両が、危険物、化学物質、高圧ガスなどを輸送しているときに万一事故などが起きれば、その中身が飛散したり火災などが発生したりすることがあるだろう。そのような場合、さらに大きな二次災害が生じて、事故が拡大する危険性がある。そんなときに、当該車両のドライバーが駆け付けた消防や警察などの防災、消火をする関係者に、正しい情報の提供を行えるようにと考え出されたのだ。

 このカードが普及したのは、1997年に発生した事故がきっかけとされる。静岡県の高速道路上で発生したその事故は、タンクローリーが単独で横転したものであったが、流出した化学製品が特定できなかったために、処理に時間がかかったのだそうだ。結果、高速道路は半日以上閉鎖されたために、大きな交通混乱を招いたのである。

 これが万一都心部などで発生し、且つ流出したものが有毒物や可燃物であるなどした場合には、多くの犠牲者が出る大惨事に発展しかねない危険性を孕むことになる。ゆえに、いまでは国土交通省や消防庁から、危険物、化学物質、高圧ガスなどを運搬するドライバーに対して、つねに携帯するよう通達されているのだ。

 カードは日本化学工業協会(消防法上の危険物)や高圧ガス保安協会(高圧ガス)が作成したモデルを元に、荷主が用意することになっている。そこに記載される項目は、
・搭載物の品名と国連番号(国際連合の危険物輸送専門家委員会が分類・付与した危険物に関する番号のこと。UN.NOまたはUN番号とも呼ばれる。この番号を見れば搭載物が判明する)
・該当する法規(消防法・毒物及び劇物取締法・高圧ガス保安法・火薬類取締法・道路法)
・搭載物の特性(危険性:熱水性・可燃性・爆発性、有害性: 有害ガス発生・目や皮膚に触れると危険、環境汚染性: 河川への流入注意、性状:個体・液体・気体・水溶性)
・事故発生時の応急措置
・緊急通報先と通報例
・緊急連絡(荷主会社・運送会社)
・災害拡大防止措置(漏洩や飛散をしたとき・周辺火災のとき・引火・発火したとき)
・救急措置
といったものであり、消防・警察関係者が一目瞭然に理解可能な内容になっているのだ。

 カードを運用する際にも注意が必要で、
・カードは目のつきやすいところに設置する=万一の際に見つからなければ意味がない
・輸送している危険物、化学物質、高圧ガス以外のカードを携行しない=万一の際の対処に混乱を招く
・緊急連絡先は24時間対応可能な事業所などにする
・万一の事故に対応するための体制を確立して訓練を実施する
といったことだ。

 このように、「危」「毒」「火」「高圧ガス」といったマークがついた、危険物・化学物質・高圧ガスなどを運んでいるトラックドライバーは、万一の際に被害を最小限に抑えられるように、人知れず細かな気配りと努力をしているのである。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了