この記事をまとめると
■ADASは運転をサポートしてくれる電子制御装置
■乗用車のみならずトラックやバスにも搭載されている
■トラックやバスに採用されるADASの内容について解説
衝突被害軽減ブレーキの搭載は乗用車よりも先に義務化されている
現在販売されている乗用車は、衝突被害軽減ブレーキ(通称:自動ブレーキ)の搭載が義務化されている。といっても新型車は2021年11月から(輸入車は2024年7月から)義務化が実施されているが、生産継続車は2025年12月から(軽自動車は2027年7月から)、輸入車の生産継続車は2026年7月から義務化されることになる。
じつはトラック・バスは乗用車に先駆けて、衝突被害軽減ブレーキが義務化されている。大型トラックは2011年、バスは2012年には搭載が義務化されているのだ。ただし、バスの場合は乗客が乗っているので、ブレーキの制動力は調整されており、乗用車ほどの急制動による衝突回避の効果は期待できない。それでもバスメーカーは検知機能などを高めて、ある程度の速度までは障害物の前で停止できるようになっている。
路線逸脱警報も2014年には搭載を義務化されている。大型車両は、高速道路などで事故が起こると重大な規模になりやすいため導入が急がれたのだ。レーンキープアシストのように積極的にハンドル操作をサポートする機能は、車重があるバス・トラックには導入が難しかったが、油圧パワステを電動油圧パワステとして制御することにより、近年では可能としている。
こうした運転をサポートしてくれる電子制御装置のことをADAS(先進運転支援システム)と呼ぶが、このほかのADAS関連の装備としては「ドライバー異常時対応システム」の搭載が進んでいる。
これはバス運転手が急病で運転不能になったことで重大な交通事故に発展したことがきっかけとなっている。乗客が運転手の体調急変などに気付いたら、スイッチを押すことで車両を停車(ハザード点灯、ホーン作動)させ、周囲の車両との接触事故を避けて、緊急通報まで自動で行える。
最近は路線バスにも導入が進んでおり、運転席の後ろの壁付近にスイッチを設けた車両を見かけるようになってきた。
さらに、「ドライバーモニタリングシステム」も、乗用車よりトラックのほうが導入が進んでいる装備だ。これはドライバーの顔を赤外線カメラで捉えて、瞬きや視線の移動などを分析し、居眠りや脇見などをしていないか判断するものだ。体調急変にも対応できるほか、“ながら運転”をしてしまうドライバーへの抑止力にもつながるため、ドライブレコーダーにも機能が組み込まれているタイプもある。
また、ADASではないが、エアバッグを制御するECUの内部には、衝撃(イベント)を検知すると、その30秒前から5秒後までの運転操作の状況(ステアリングやペダルへの入力)を記録するEDR(イベントデータレコーダー)が備わっている車種が多い。
国土交通省は、このEDRの搭載を2026年から段階的に義務化させる考えだ。といってもすでに先行導入している車両も多く、これまでの交通事故でも事故原因の解明にEDRのデータを利用しているケースが増えている。
「衝突被害軽減ブレーキ」も2025年9月以降の新型車は歩行者にも対応するよう義務付けられるなど、ますます安全性が高まるよう規制は厳しくなっているが、トラック・バスメーカーは積極的に対応しているのだ。