この記事をまとめると
■日産ディーラーの会社名にプリンス店やチェリー店などの名前が一部地域で残っている
■人口減や保有年数の増加で新車販売が厳しくなり販売店の統廃合が進んでいる
■2018年から新たなディーラー販売網が整備され始めている
日産ディーラーの会社名にはマルチチャンネル化の名残があった
2024年現在、全国に117社約2100店舗を展開する日産自動車のディーラー。現在はどこでも基本的にすべての車種を購入できるが、日産自動車の販売店一覧を見ると、日産店以外にモーター店、プリンス店、チェリー店、サティオ店が存在。これらは、販売店をマルチチャンネル化していたときの名残である。
販売店のマルチチャンネル化は、1960年代以降の高度経済成長に伴うクルマの保有台数増加に対する対応で、目的は同じエリアに販売車種を共有するディーラーを出店したときの顧客の奪い合いを抑制することにあった。
各店舗に明確なコンセプト(ブランディング)を与え、それに見合った取り扱い車種を販売することで、市場を細分化し、同一エリアに同一メーカーの販売店を出店できるようにしたのだ。各メーカーに「兄弟車」と呼ばれるクルマが多く存在したのもマルチチャンネルであったがゆえ。
ディーラーは顧客との長期的な関係構築を目指し、たとえば「上級車へ乗り換えたい」と要望があった際、その販売店に該当の車種がなければ、ほかの販売店に顧客が流れてしまう可能性がある。それを防ぐために兄弟車が用意されていたのだ。
各メーカーに存在したマルチチャンネル化はなぜ衰退したのか
では、現在はなぜ販売店統合が進んでいるのか? 一番の理由は市場の成熟だ。クルマを所有するのが当たり前となり、技術の進歩により保有年数が延びた。また、上記の理由で兄弟車を設定しているため、売れ行きが好ましくなくても販売店に与える打撃が大きくなることから、簡単に生産中止にできないなど、弊害が出始めたから。さらに、日本の総人口減も影響している。つまり、マルチチャンネル販売のデメリットがメリットを上まわったのである。
さて、話を日産の販売店に戻そう。上述したとおり、かつては日産には5種類の販売店があった(一部例外あり)。それぞれを簡単に説明すると、日産店は日産の中心車種を扱うお店で、ミドルクラスセダンのブルーバードを軸にプレジデント、フェアレディZ、ダットサントラック、サファリなど幅広いカテゴリーのモデルを取り扱っていた。モーター店はセドリック、ローレルなど高級車をメインに取り扱うチャンネル。サティオ店はかつてサニー店と呼ばれた販売店で、大衆車を中心としたラインアップ。代表的な車種として、サニーのほかにシルビア、プリメーラなどがあった。