ディーゼルエンジンは「天ぷら油」でも走るってマジ!? 真相を探った! (2/2ページ)

天ぷら油は燃料になる?

 さて、話をここでのテーマに戻すが、ガソリンより粘度が高く揮発性の低い軽油という燃料を使うディーゼルエンジンで、「天ぷら油という植物油の代用は可能か否か」、ということである。じつは、よく知られるように、近年話題となっている低公害性を謳うバイオマス燃料とも関連した話になるのだが、説明すると長くなるのでこのテーマについては項目を改めることにして、食用油で走れるのかどうかに的を絞ることにしよう。

 結論からいうと、イエスでありノーである。乗り物(ここではとくに自動車となるが)の原動機としてのエンジンは、シリンダー内で燃料を燃やし、その燃焼エネルギーを直接動力として使う内燃機関である。ということは、燃料がもつ熱エネルギーの大小によって、機関が発生する出力(トルク)が左右されることを意味している。

 つまり、まず最初に問題となるのが、天ぷら油と軽油の熱エネルギー比較である。天ぷら油の熱エネルギーが軽油と比べて極端に低ければ、燃料として適していない(実用にならない)ことになる。申し訳ないのだが、天ぷら油そのものの熱エネルギーに関するデータはもち合わせず、食用油(植物油)全体がもつ熱エネルギーという捉え方になるが、おおよそ軽油の1割ダウン程度と見て差し支えないようだ。乱暴な表現だが、軽油で100馬力を発生するエンジンなら、食用油(植物油)を燃料とした場合には90馬力前後の性能は得られる、と考えてよいことになる。

 熱エネルギー的には、食用油(植物油)でも化石燃料(軽油)の代役が果たせることはわかった。では、燃料の性質としてはどうなのだろうか?

 化石燃料は炭素と水素の化合部である。ところが、植物油には炭素、水素に酸素が加わることで異なる組成となっている。手っ取り早くいえば、含まれる脂肪酸(3価のアルコール、グリセリン)によって粘性が生じ、これがインジェクターから噴射される燃料の微粒子化に影響を及ぼし、燃焼のコントロールがうまくいかないばかりか、インジェクターを汚染する(詰まらせる)原因となってしまう。いうまでもなく、現在主流のコモンレールディーゼルを前提とした話で、余談ながら、廃食用油からのバイオディーゼルの精製では、グリセリンを取り除く工程が大きな作業ポイントとなっている。

 最後に現実論の話だが、現在、軽油は1リッターあたり高くて150円前後だろうか。対する植物油(流通する主力油はサラダ油?)を調べてみると、リッターあたり500〜550円といった価格で販売されている。コストパフォーマンスの点で、食用油をディーゼル燃料として代用するのは、現状では圧倒的、絶対的に不利である。

 以上のことから、ディーゼルエンジンは食用油でも運転は可能だが、性能の保証(故障の誘発)ができず、燃料コスト的にも見合わない、という結論で落ち着くことになる。


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