エンジンオイルの缶に書いてある「0W-20」に「10W-30」! 潤滑だけじゃないオイルの役割と数字の意味を誰でもわかるように詳しく解説!! (2/2ページ)

数字にはなんの意味がある?

■オイルの粘度表記は何を表しているのか

 さて、ここからエンジンオイルの粘度についてのお話です。

 まず始めに、「粘度」というのはオイルの流動性を示す言葉です。言葉ではちょっと難しいですが、要は数字が少ないと粘度が低くサラサラで、数字が大きいと粘度は高くドロドロになります。

 粘度が低いことを「柔らかい」、高いことを「硬(固)い」と表現する人もいます。

 斜面に垂らしたときにすーっと流れていくのが低粘度で、ゆーっくり流れるのが高粘度です。

 エンジンオイルには、用途に応じて粘度の違うものが用意されています。ここで今回の主題、数字と記号が合わさった例の文字列について解説します。

 ここでは「10W-40」を例に話を進めていきましょう。

 ハイフンを挟んで両側に数字とアルファベットが配置されています。頭にWが付いた2桁の数字は「低温時の粘度」を表しています。ちなみに「W」は「Winter(冬)」の頭文字です。

いまこそ知っておきたいオイルの正しい選び方

 通常のオイルは主に0/5/10/15/20/25の6つにわけられています。

 この数字は一定の温度における粘度を表したものと勘違いしている人も少なくないと思いますが、正しくは「外気温が○○度の状態まで対応している」という数字になります。具体的な数字は下記のとおり。

0W:−35℃

5W:−30℃

10W:−25℃

15W:−20℃

20W:−15℃

25W:−10℃

 数字は「グレード」を表しているので、温度の数字とは関係無いのがややこしいですね。

 ともかく、数字が低いほど低温に耐えられるということです。そのため、豪雪地域など気温が0度を大きく下まわる地域では、グレードの数字が低いほうを選ばないとオイルが固まってしまい、始動が困難になってしまいます。

 逆に西のほうの温暖な地域では、数字の大きいものを選んでも固まる心配がありません。もちろん、数字が小さいものを使用しても何ら影響がないので、温暖な地域ではそれほど前半の数字は気にする必要はないでしょう。

 そして、ハイフンから後の2桁の数字は「高温時の粘度保持性能」を表しています。

 こちらもグレードに応じて数字が割り振られていますが、こちらは主に8/12/16/20/30/40/50/60の8つにわけられています。

 ややこしいのが、この数字は低温側に対する高温側の対応幅と捉えてしまいがちなことです。

 この後半の数字はオイル自体の基本粘度を表しています。耐熱温度ではないということに注意してください。オイルの耐熱温度はその配合などによって異なりますが、油温の上限は130度といわれていて、それを越えるとエンジンが耐えられなくなる可能性が高くなります。

 高温側の粘度というのは、メーカーによって基準がやや異なりますが、常用域の高い側である油温が85〜90度の間の温度を基準に算出した粘度となっています。

 この温度域でどれくらいの粘度≒油膜保持性能を維持できるかという基準がその数字というわけです。なので、オイル自体の基本粘度はこちらの数字といっていいでしょう。

■粘度はどうやって選べばいいの?

 間違いのない基本的な考えはメーカーの推奨するオイル粘度を選ぶということでしょう。設計時の部品のクリアランスなどはその粘度を基準としていますので、まずそれが前提になります。

 なのでここからは一般の傾向の話をしていきます。

 粘度表記を見たときにまず頭の数字に引っ張られてしまう傾向もあると思いますが、先述のように基本は後半の数字のほうです。

 標準は30か40を選んでおけば外さないと思いますが、猛暑の時期に険しい山道を走ったり高速道路を連続で走行するのが多いようなときや、サーキット走行をするとき、あるいはエンジンをチューニングしたときなどは粘度が高いものが必要になることが多いと思います。

 また、昨今の低燃費車に搭載されるエンジンは、クリアランスを突き詰めて低フリクションの設計がなされているものが多く、オイルにも抵抗の低さが求められるため、粘度が低いものを指定するケースも少なくないでしょう。

 年に2回のオイル交換を習慣にしているという人も少なくないと思いますが、その場合は暑い時期用に少し高粘度のものを、寒い時期用に低粘度のものを選ぶのもアリだと思います。

 そして、それをベースにして低温時の粘度を選択していきます。こちらは主に始動時とその直後のことを考えて選択します。主に冬場への対応が中心になるでしょう。

 先述のように平均で零下になる地域はその気温に合わせてグレードを選びます。このとき、大は小を兼ねる理論で「よくわからないから0Wを買っとけばOKでしょ」という考えはある意味OKだと思います。

 ただし、低温時の特性を高めるためには添加剤などの調整成分を配合する必要があり、基本の潤滑性能にもわずかながら影響します。価格にも反映されるので、その点も踏まえて選んでください。

 最後に注意点をひとつ。

 低燃費車が指定する低粘度のオイルで高温時に高負荷高回転の走行を連続で行うような場合、設計時の想定を越えてしまうことが考えられます。粘度の低下による油膜切れの恐れを考慮して高粘度のオイルに入れ替えるなどの対策を考えたほうがいいでしょう。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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