親近感がわくラフな格好での接客で販売促進効果を高めている?
以前、ある高級ブランドの新車ディーラーを訪れたことがある。扱う車種が高額であり、購入検討するお客も富裕層ばかりなので、平日に訪れたときはセールスマン個々がネクタイにスーツ姿であった。しかし、日曜日に再び訪れるとセールスマンの多くがアロハシャツのようなものを着てリラックスしていた。
「こちらでは富裕層は週末には買い物はしません。とくに日曜に高級ブランドディーラーを訪れる人の多くは、祖国から移住して間もないなか、苦労して商店や会社経営を成功させ余裕ができたので高級ブランド車を買おうかなという、「新移民」とも表現される人たちが目立ちます。ゼネラルマネージャーも休むのが一般的であり、セールスマン個々にとっては「オマケ的」な商売であり、相手を見てラフなスタイルでも大丈夫と見ているようです」とは前出事情通。
そのようななか日曜日に、ネクタイにスーツ姿のセールスマンがいたので話を聞くと、「お客さまを『色眼鏡』では見たくありません。どんなお客様であろうと接客姿勢を変えたくないのです」と話してくれた。スーツ姿のセールスマンみんながみんな怪しい人でもないようだ。
日本でも過去には新車セールスマンはネクタイにスーツ姿が当たり前であった。ただあくまで一般論ではあるが、多くのセールスマンはヨレヨレのスーツという印象を筆者はもっている。外まわり営業というものはほぼ死滅しているものの、ずっとデスクワークをしているわけではないのが新車販売に限らずセールスマンというもの。ときには上着は脱ぐとしても、スラックスで納車前の新車を洗車したりすることもあるので、スーツも自然とヨレヨレが目立ってしまうのである。
歩合給の割合が多く、羽振りが良かったころはそれでもビシッとスーツで決めるセールスマンも目立っていたが、いまや「薄給仕事」ともいわれているなかでは、スーツの新調もなかなかできないようだ。そのようなことが影響したかどうかはわからないが、最近ではワイシャツにネクタイではなくおそろいのポロシャツなどで服装をそろえるディーラーも目立っている。スーツ姿といってもヨレヨレではお客に対するイメージもよくないと判断しているのかもしれない。
ラフなスタイルは高額車両の多い輸入車ディーラーでも珍しくなくなっている。夏季のノーネクタイを正すつもりはないが、スラックスもワイシャツもヨレヨレといったセールスマンも目立ち(夏には腕まくりしたまま接客するセールスマンもいた)、輸入車もブランドによってはそれなりに大衆化が進んでいるのかなと考えている。「オシャレな日本人」と前述したが、フォーマルスタイルに関しては筆者がロサンゼルスで聞いたように、「ビシッとしたスーツ姿=怪しい」となってきているのかもしれない。
まあ服装をとやかくいうよりも、より多く値引きが引き出せてお買い得に買えることが新車購入商談では最優先となるので、人柄は気になるものの、「セールスマンがスーツ姿ではなくなってきている」ということは買う側にとっては大した問題ではなく、むしろ親近感がわき販売促進効果を高めているのかもしれない。