スズキ車がどう考えても安い! 他社と比べて何かを「ケチって」いるわけじゃないのに安い秘密 (2/2ページ)

細かく見ていくとスズキの企業努力が見えてくる

 たとえば、日本一売れているクルマの座をホンダN-BOXと競い合っているスペーシアの設計や作り込みを見れば、結果的に「コスパがよい」と感じさせる、スズキならではのアプローチが見えてくる。

 せっかくなのでスペーシアギアとN-BOXジョイというSUVテイストの2台から、最上級グレードの2トーンボディのターボ車(FF)をピックアップして比べてみよう。

 メーカー希望小売価格は、スペーシアギアが209万7700円、N-BOXジョイは212万7400円となっている。わずかな価格差だが、N-BOXジョイは純エンジン車だが、スペーシアギアは、小さいながらリチウムイオン電池を搭載したマイルドハイブリッド仕様なので、そこを加味するとかなり割安といえる。WLTCモード燃費はスペーシアギアが21.9km/Lで、N-BOXジョイは20.2km/L。わずかな差ではあるが、ハイブリッドの効果は数字にも表れている。

 タイヤサイズはどちらも14インチながら、スペーシアギアはアルミホイールを標準装備。N-BOXジョイも凝ったスチールホイールなので豪華さでは互角といえるかもしれないが、ここでもスペーシアギアのコスパのよさは際立つ。

 両モデルとも渋滞対応ACCや電動パーキングブレーキを標準装備しているが、スペーシアギアは単眼カメラとミリ波レーダーを併用するシステムで、N-BOXジョイは広角カメラだけを使うタイプ。センサー数が多いほうがエライというわけではないが、スズキがセンサーをケチって安く仕上げているわけではないことがわかる。

 ただし、細かい部分を見ていくと、スズキらしい工夫がみられる。その最たる例がメーターだ。両車ともフルデジタルメーターだが、スペーシアギアは3桁のデジタル表示の速度計+4.2インチ・カラーマルチインフォメーションディスプレイを組み合わせている。一方、N-BOXジョイは7インチのカラーディスプレイによるフルデジタル仕様。ユーザー的には、どちらでもデジタルコクピットが味わえるものだが、スズキはディスプレイサイズを小さくすることでドライバーが感じる美しさは維持しながら、コストを抑える手法をとっている。

 こうした細かい部分での工夫を知れば、スズキの「コスパのよいクルマづくり」を支えていることが理解できるのではないだろうか。

 さらにいえば、スペーシアギアには後席オットマンモードなどを実現するマルチユースフラップや、キャビンの空気を循環させて空調効果を高めるスリムサーキュレーターといった快適機能も標準装備されている。まさにスズキの高コスパを実感できる好例といえる。

 ただし、スズキのラインアップからコスパのよいクルマを探そうと思ったときに軽自動車ばかりに注目する必要はない。古くは「泣く子も黙る79万円」という語呂合わせ的キャッチコピーで一世を風靡したスイフトSE-Zのように、登録車にもスズキの「小・少・軽・短・美」なクルマづくりが実感できるモデルが多く存在してきている。

 現行ラインアップでいえば、1.2リッターエンジンを積んだ後席スライドドア車ながらスターティングプライスが164万7800円という「ソリオ」が、スズキらしい高コスパカーの代表といえるだろう。また、「スイフトスポーツ」についても、そのパフォーマンスと価格のバランスから圧倒的な高コスパ系スポーツカーとして知られている。

 いずれもモデルチェンジがウワサされているが、次期型に進化してもスズキらしいコスパのよさは守られるだろう。それこそがスズキの高コスパというブランドイメージを守るために最重要になるからだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

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