電気自動車を満充電にしているのにバッテリー上がりで走れないってどういうこと? EVにもエンジン車と同じ「12Vの補機バッテリー」を積んでいるワケ (2/2ページ)

始動するときには12Vバッテリーのほうが都合がいい

 結論をいえば、モーターを動かすための高電圧バッテリーをシステムオフ時に切り離しておくために起動用に別のバッテリーが必要なのである。

 考えてみてほしい。クルマに乗るとき最初にどんな操作をするだろうか。スマートキーであればドアハンドルに触れたり、リモコンでキーロックを解除したりするだろう。つまり、キーを刺してロックを解除するタイプでない限り、ドアロック解除についても電気を使っていることになる。

 もし高電圧バッテリーだけでEVを動かそうとしたら、常にバッテリーがオンの状態で待機していないとドアを開けることさえできなくなってしまう。それはあまりにリスキーな状態であることは想像に難くない。

 そのため、スタートボタンを押すなどして、システムを起動するまでは駆動用バッテリーはスリープ状態にしている。つまり12Vバッテリーは起動用に使われているもので、EVを走らせるために絶対必要なバッテリーといえる。

 そのほか、EVであってもカーナビやオーディオ、パワーウインドウなどの電装系に分類される補機類の多くは、ほかのクルマ同様に汎用的な設計となっている。基本的にこれらはエンジン車と共通なので、12Vで動くようになっている。そうした部品を共用するためには12Vのバッテリーを積んでおくと都合がいい。そのため、起動用バッテリーには12V鉛バッテリーが使われることが多いのだ。

 勘のいい方なら、ここまで読んでくればおわかりだろうが、12V鉛バッテリーがアガってしまうとEVであっても起動することはできない。ルームランプを点けっぱなしにするなどのミスで12Vバッテリーがアガってしまうと、たとえ駆動用バッテリーが満充電であってもEVは動き出せないのだ。

 実際にEVでもバッテリーがアガってしまうことがあり、そうなると走れないという意外に知られていない。EVユーザーであれば注意したいポイントだ。まあ、そもそも12Vバッテリーが完全にアガった状態になるとドアロックも解除できないので乗り込むことさえできないかもしれないが……。

 ちなみに、EVの12Vバッテリーであっても、他車の元気なバッテリーとジャンプコードでつなぐことでシステムを起動させることはできる。ただし、構造的な問題でEVからエンジン車へ電力供給するようなつなぎ方はできないことは覚えておきたい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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