ポルシェにとってもファンにとっても「GT」は特別な称号! とはいえややこしすぎる911の「GT」と名の付くモデルを整理してみた (2/2ページ)

ロードカーとして進化していった「GT」の名を冠したモデル

GT2

 これまたBPR、後のFIA GT選手権のGT2クラスへの参戦を目論んだマシンというのがスタートです。レギュレーションでは過給(ターボ)エンジンが認められたほか、全輪駆動は禁止、そのほかはわりと自由度が高いものでした。そこでポルシェは発表したばかりの993(993ターボにあらず)をツインターボ化したマシンをGT2と名付けてエントリー。むろん、ホモロゲーションモデルとしてロードバージョンが作られたことはいうまでもありません。

 ただし、公道仕様車がリヤフードに付けたバッジには2の文字がなく、単に911 GTとだけ記されています。カレラ2のバッジから流用できるのに、これはちょっと理解しがたいポイントです。

 1999年にはフルモデルチェンジしてGT2は996ベースとなりましたが、これ以後のGT2はレース仕様でなく完全なロードバージョンとして開発されています。この年から、後述するGT3でレースに参戦することになり、996GT2以降は正式なレースエントリーをしていません。

 とはいえ、462〜483馬力を後輪だけでドライブする野蛮さは誰もが納得するポルシェのGT2であり、ある意味では最高のロードカーと呼べそうです。

 次いで997、991シリーズにもGT2はラインアップされましたが、このころになるとストックのターボと差をつけるのがやや苦しくなっている模様。とりわけ991にはターボエクスクルーシブという決定版もあり、GT2といってもレースに参戦していないのでは付加価値もさほど上がらなかった印象です。

 レースにはGT3が参戦していて、それなりの成績をマークしていましたから、商売上はだいぶ苦戦したのではないでしょうか(とはいえ、全世界で完売してますけどね)。

GT3

 お察しのとおりGT1がプロトタイプでGT2がターボときたら、GT3は自然吸気の911というのがセオリーでしょう。が、これまでポルシェは自然吸気エンジンで軽量化やレーシングトリムに近い装備を施したモデルにはRSの名を与えていたはず。別にGT3と名付けなくてもFIA GT選手権にはエントリーできたんですけどね。

 おそらくは、新たなカテゴリー名をつけることで996シリーズのテコ入れもしたかったとか、RSは別のモデル用に温存していたとかなんとか理由があるのでしょう。

 それにしても、996GT3はじつにポルシェらしい気合の入ったモデルでした。エンジンはストックの996とはまったくの別物で、むしろグループCの962や水冷システムを装備した959にほど近いカスタマイズが施されていました。

 とにかく高出力に対する耐久性をもたせたことが特徴で、さすがル・マンで培われたノウハウは違うと、レースシーンでは賞賛の声しか上がらなかったものです。

 さて、GT3は996のあと、997、991へとモデルチェンジを重ねていくのですが、RSのふたつ名が付けられたり、Rのイニシャルが付けられたり、ポルシェ史家が頭を抱えそうなネーミングロジックが展開されていきます。ノーマル911=牛丼(並)と例えると、911GT3=牛丼特盛、911GT3 RS=牛丼特盛つゆだくだくだく、みたいなややこしさでしょうか(笑)。

 とはいえ、GT1やGT2と比べても派生モデルの数が断然多く、それだけレースへのエントリーやサーキットで乗りたいユーザーが多いことにほかなりません。レースシーンではライバルも多く、決して横綱相撲を取らせてもらえない状況ですが、速い911に乗りたいと思ったら、いまのところはGT3一択でしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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