この記事をまとめると
■国交省が完全キャッシュレスバスの実証運行についての実施路線を公表
■国交省は路線バスの完全キャッシュレス化で経営改善や運転者の負担軽減を見込んでいる
■現金決済とキャッシュレスの混在は混乱を招く恐れがある
路線バスのキャッスレス化の実証実験を開始
国土交通省(国交省)は8月30日に完全キャッシュレスバスの実証運行の実施路線を選定したことを報道発表した。18事業者29路線を選定し、2024年11月1日以降順次運行開始予定となっている。
選定基準は、①利用者が限定的な路線②外国人や観光客の利用が多い観光路線③さまざまな利用者がいる生活路線でキャッシュレス決済比率が高い路線④自動運転などほかの社会実験を同時に行う路線、となっている。
国交省がこのような実証実験を行おうとしている背景説明としては、慢性的な働き手不足(運転士)のなか、全国のバス事業者の9割が赤字に陥っており、路線バスの維持が危機的状況にあるとし、完全キャッシュレス化により大きな経営改善効果や運転者の負担軽減が見込めるとしている。
国交省資料によると、現状でも交通系ICカード決済が主なものとなるものの、キャッシュレス決済比率は88.4%となっているが、これを100%にしたいので、今回の実証実験で効果検証することになったようである。
詳細は書かれていないが、交通系ICカードのほか、メジャークレジットカードやスマホなど多様なキャッシュレス決済を導入し、100%キャッシュレス決済を目指すことになるようである。
以前、筆者自宅最寄りのターミナル駅から空港までの連絡バスをバス停で待っていると、アジア系外国人の家族が、「乗車券を買いたいのだが……」と英語で聞いてきた。筆者の利用するそのバスでの運賃決済は現金決済は受け付けておらず、ネットで事前予約した際にクレジットカードでの事前決済や、予約後コンビニでの乗車券の発券及び支払い、そして交通系ICカードでのみ運賃決済が可能であった。ネット予約は日本語のみでの対応だし、いまからアカウントを作ってといったこともしていられないので、「交通系ICカードはもっていますか」と聞いたら、お父さんがバス停を離れICカードを買ってきて決済していた。
筆者が訪れたことのある東南アジアなどの新興国では、交通系ICカード一択といったケースがほとんどであるが、完全キャッシュレス決済となっていた。乗車時に専用端末機にタップして降車時に再びタップして決済となる。日本でも東京など大都市で導入している「均一運賃」での運行以外ではお馴染みの決済の流れである。
一方のアメリカでは、たとえば全米だけではなく世界から観光客が訪れるネバダ州ラスベガスなどは、市内ダウンタウン(中心市街地)から有名カジノホテルが林立する空港に近いストリップ地区を結ぶバスが、いつも多くの観光客で混雑しながら運行している。
日本に比べれば治安のよくないアメリカだが、観光地ということもあるのか、利用者の多いバス停には必ずといっていいほど、一般乗車券や2時間、1日、1週間有効などの乗車パスの自動販売機が設置されていた。
その自動販売機は現金以外メジャークレジットカードでも乗車券の購入が可能であり、乗車時にタップするのではなく運賃箱にある指定された溝にパスの磁気面を合わせてスワイプ(任意方向に滑らせる)させて乗車するようになっている。紙のようなパスなので日本のICカードのようにチャージを繰り返すことはできないが、最近はチャージ可能なカードや、スマホアプリやクレジットカードでの決済も可能となっている。しかし、依然として現金での乗車も可能となっている。