この記事をまとめると
■クルマのエンジンのレイアウトには横置きと縦置きがある
■自動車メーカーはエンジンの搭載の仕方で走りのよさを訴求することがあった
■EVではモーター駆動される車輪の位置でスポーティネスをアピールのが当たり前になるかもしれない
エンジン搭載の仕方をアピールするメーカーもある
エンジンを車体の前部に搭載する場合、
一般ユーザーとしては、クルマのボンネットを開けても、最近のクルマはエンジン上部の大きなカバーがあることが多いので、横置きか縦置きかがひと目ではわからないかもしれない。
それどころか、たとえばアメリカでは、自分のクルマのエンジンの搭載方式はもとより、FF(前輪駆動)なのかFR(後輪駆動)なのかすら知らず、また排気量や気筒数にもまったく関心がないという人も少なくないのが実状だ。パワートレインに対しては、燃費をもっとも気にする。
そうしたなかで、少し古い話になるが、1990年代末から2000年代頭にかけて、日産のプレミアムブランドであるインフィニティがアメリカにしては珍しく「FRだからスポーティ」というセールスプロモーションを強化したことがある。
謳い文句は、「Z(ジィー)がモータースポーツで培ったパワートレインのレイアウトがインフィニティの強み」というものだった。つまり、縦置きエンジンのFRということだ。
一方、日本では縦置きだからスポーティというイメージを強くもっている人は、インフィニティがアメリカでブレークした1990年代末頃の時点で、あまり多くなかったように思う。
1970年代頃までは、縦置き、横置きという区別ではなく、FFは珍しいという印象があった。また、FFベース車でも三菱「ランサーエボリューション」のような事例があるため、日本ではFFやエンジン横置きに対して、スポーティ性を否定する人がそもそも少ない印象がある。
また、2010年代以降になると、日本やアメリカだけではなく、グローバルでセールスボリューム(販売量)が多いセダンやコンパクトSUVはFFが主流となり、その上で運動性能に対する電子制御技術が発達するなどして、FFでエンジン横置きでもスポーティな走りに対応できるようになっていった。
それでも、たとえばマツダは「CX-60」を皮切りとしたラージ商品群を、エンジン縦置きのFRベースとしたことで、「走る歓び」という商品性を強調している。
こうしたエンジンの縦置き・横置きの議論は今後、EVシフトがさらに進むことで徐々にユーザーが忘れてしまうのかもしれない。
EVシフトのなかでは、FWDベースかRWDベースかで走りのスポーティ性を指摘する声がすでに広がってきているところだ。エンジンの縦置き・横置きの議論が懐かしい、と感じる時代がもうすぐやってくるのかもしれない。