R32〜35GTRのバカッ速伝説はこの秘密兵器があってこそ! 日産が生み出した「アテーサE-TS」という驚異の4WD制御 (2/2ページ)

いまや日産の高性能車には欠かせなくなった「アテーサE-TS」

GT-Rを速く走らせるには従来のセオリーと異なる走らせ方が必要

 また、横Gセンサーが路面状況を感知し、車速や車両に伝わるGを感知して、どんな路面状況下でも弱アンダーで走れるように自動的・連続的に前輪の駆動配分を調整。どんな状況下でも安定した走行が実現できる。

 たとえば、横Gが大きくなる高速コーナーでリヤタイヤが滑り出すと、フロントタイヤに車速分だけ必要な駆動を伝えてリヤの滑り出しを抑える。同時にフロント側は前方に車体を引っ張り、車体の安定性を高める。これにより、アウトインアウトといういままでの走らせ方が通用しなくなり、「減速していかに早く車体を出口方向に向けてアクセルを踏むか」というGT-R特有の走らせ方が要求された。

 さらに、ABSのスリップ検知能力を高めるために車体の前後にもGセンサーを採用。アテーサE-TSと統合制御することで、急制動でも安定したブレーキング性能を確保。急制動時もエンジンブレーキを前後50:50に配分することで、低ミュー路での横滑り防止と車両の安定性を高めるなど、挙動変化を抑えるさまざまな処方が組み込まれている。

 そのほか、従来の4WDが引き起こす悪癖はすべて自動で抑制され、ドライバーはアクセルとブレーキ、ステアリング操作に集中すれば速く走れるのだ。

R33でアンダーステアを克服して最新のR35はさらに進化

 ただ、このシステムを初採用したR32の走りは、重量配分の問題もあって、想定したよりもややアンダーステアだったという。そのため、R33ではE-TSと同じ多板クラッチと横Gセンサーを連動させた電子制御LSDの「アクティブLSD」が新たに投入された。アテーサE-TSの前後方向の駆動力コントロールに加え、後輪左右の駆動配分をエンジン出力に依存せず、横Gの大きさに応じて最適化したアクティブLSDとの組み合わせで、アンダーステアも克服している。

 最新のR35型GT-Rではトランスミッションをエンジンと切り離し、後輪位置にレイアウトすることで重量配分を最適化。核となるトランスファーの基本的な考え方は変わらないが、電磁式を採用することで、リヤタイヤが滑らなくても湿式多版クラッチの圧着を自由にコントロールできるようになるなど、大幅な進化を遂げている。

「どんな場面でも速さを引き出せ、意のままに操れる」アテーサE-TSは、いまもって日産自動車の高性能モデルに欠かせないシステムなのである。


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