多くの日本人が知らない名門スポーツカーメーカー! 活動休止中の「アスカリ」のクルマが放つヤバすぎる魅力 (2/2ページ)

最後のスーパースポーツカー「KZ1」

そして2003年になると、アスカリからは「KZ1」と呼ばれるニューモデルが誕生する。KZ1というネーミングは、FGTとともにアスカリ社を手中に収めていたクラウス・ズワートのイニシャルと、彼自身の企画による第1号車を意味するもの。

その生産は2005年にスタートし、そのためにイングランドのバンバリーには4000平方メートルを超える新工場も完成。ここでほとんどハンドビルドによってKZ1はアッセンブリーされていったのだ。

当初から50台の限定車として企画されていたKZ1は、たしかに魅力的なスーパースポーツカーだった。ミッドには最高出力で507馬力、最大トルクでは500Nmを誇るBMW製S62型4.9リッターV型8気筒エンジンがドライサンプ化して搭載され、これにはCIMA製の6速MTが組み合わされた。

アスカリ伝統の軽量性も受け継がれ、結果0-97km/h加速は3.7秒、0-161km/h加速も8秒という非常に魅力的なパフォーマンスが実現された。注目の最高速は323km/hとエコッセのそれとさほど変わらないが、それでもオーバー300km/hの世界を確実に手にすることができるマシンとしてKZ1は当時大きな話題となった。

KZ1にはレーシングバージョンも存在する。「KZ1-R」と呼ばれるモデルがそれで、FIAのGT3ヨーロピアンチャンピオンシップや、アメリカのユナイテッド・スポーツカー・チャンピオンシップなどにGT3車両としてエントリーした記録が残る。

大型の固定式リヤウイングやコンパクトなフロントスポイラー、それに前後のオーバーフェンダーなどで外観を武装し、さらにBMW製のS62型エンジンも520馬力にまでチューニングしたKZ1-R。これもまたアスカリの歴史を語るには必要にして不可欠なマシンの一台といえるだろう。

残念ながらアスカリは、2010年以降、自動車の生産を行っていないが、その活動が復活すればイギリスを代表するスポーツカーブランドとして、再び脚光を浴びる存在となることは間違いない。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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