「身の丈以上」の「高額車」に新車で乗れる「残価設定ローン」! 魅力的だが「落とし穴」には要注意 (2/2ページ)

事故や盗難には要注意!

 この方法は、メーカーや販売会社のメリットも多い。まず車両の返却時に、ユーザーに改めて新車を売り込む機会が訪れることだ。そして、返却された車両が残価率の高い車種なら、中古車として高値で売却できる。残価設定ローンは、新車と中古車の販売を両方とも活性化させるため、メーカーや販売会社は力を入れる。

 とくに最近は、安全装備や原材料費の高騰で、新車価格が値上げされている。約15年前の1.2〜1.5倍だ。200万円前後で購入できたミドルサイズミニバンのノーマルエンジン車がいまでは280万円前後になり、ハイブリッドであれば大半のグレードが300万円を超える。

 この値上げに対しても残価設定ローンは効果を発揮する。車両価格のすべてを返済する従来型フルローンよりも返済額が低く、割高感も生じにくい。中級と上級グレードの差額も、残価設定ローンの月々の返済額になると、少額と受け取られる。そうなると販売店は高価な上級グレードの購入を提案しやすい。

 メーカーや販売会社にとって、残価設定ローンは車両の売れ行きを増やす上で都合がいいため、積極的に利用を促している。年率1.9〜2.9%の低金利キャンペーンも、残価設定ローンに限って実施されることが多い。

 このようなメリットがあるから残価設定ローンは人気だが、月々の返済額が少ないため、ユーザーは常に多額の債務を抱えている。全損事故を発生させたりすると、車両保険を充当しても債務が残る場合がある。追突などによって車両が大きく損傷すると、自分に過失がなくても車両に事故歴が残り、返却時に精算が生じることもある。走行距離などにも制約があるため、車両の返却を前提に残価設定ローンを利用する場合は、借りているつもりで大切に使う必要がある。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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