内装はあえての「チェック柄」のみ! N-BOX JOYの「日常プラスαの外感」を表現するインテリアの魅力をデザイナーが語る!! (2/2ページ)

他社のライバルとは違う立ち位置で展開

──他社にはギア感の強い背高軽ワゴンがありますが、そのユーザーを取りにいくというよりは……。

松村:それとは違う考え方ですね。今までにない使い方なので、そういった系統ではないお客さんを取れるのではないかと思います。

 あくまでもN-BOX自体が、日常を最大限助けてくれるクルマだと思っていて、JOYはそれよりも少し足を伸ばした出先、たとえばお子さんを送ったあと、「自分だけコーヒーブレイクをしよう」というときに、近くの公園の駐車場に停めるだけですぐできる、そういった日常の延長線上で楽しんでいただくことをイメージしています。すごく遠出をするイメージはしておらず、生活圏のなかでいかに毎日が楽しくなる、のんびり過ごせる自分だけの空間になるのが、JOYのいいところだと思っています。

──ホンダさんには「ファブテクト」という撥水・撥油機能付きの生地がありますが、それをあえて使わなかったのはなぜですか?

松村:ファブテクトはケチャップやマヨネーズなどの油汚れに強いものですが、JOYの想定コアユーザーは20歳代の男女で、子育て層をメインにしていないので、ファストフードを食べるようなイメージではなく、ちょっと腰掛けて休憩する程度、撥水くらいはしてくれないと困るというイメージですね。実際、ファブテクトを使うとだいぶ高くなるので……(苦笑)。でも、一般的な軽自動車よりは遥かにいい生地を使っていて、そこに撥水機能をもたせているので、これ以上コストをかけるのは難しかったですね。

──そこは、一体成形にすることなどでコストを抑えたのでしょうか?

松村:はい。それに形状の変更もなく、N-BOXの基本設計を賢く使っていることもありますね。

──後席を格納した際の荷室の床面は完全にフラットになっているんでしょうか?

松村:N-BOXは真んなかがへこんでいて全体的にも落ち込んでいると思いますが、JOYは完全に水平ではないものの、凹凸はN-BOXより遥かに少なくなっています。後席裏側に座り心地向上のためのプレートを入れているので、触り心地の違いをぜひ体感して下さい。

──荷室のフロア自体をあえてかさ上げすることで、床面を平らにしつつ荷物を積み下ろししやすくしているのでしょうか?

松村:自転車などの積み下ろしは、かさ上げしたぶんだけもち上げなければなりませんが、80mmなのでさほど上がってはいません。N-BOX自体の荷室フロアが非常に低いので、問題なく積み込めると思います。

──あまり低すぎると、手荷物の場合はかえって積み下ろししにくいですよね。

松村:少し上げたことが、むしろちょうどいいくらいになっているかもしれませんね。

──かさ上げしたことでラゲッジアンダーボックスも追加されたので、使い勝手もよくなっていますね。

松村:はい。そのために、パンク修理キットを一見わからないところ(フロアパネルの隙間)に入れているので、折りたたみ式の椅子やテーブルが収納できるようになっています。

──インパネまわりも色味などを変更しているのでしょうか?

松村:はい、N-BOXに対してベージュに変更し、ボタンやグローブボックスのノブなど手で触れる機能部品は黒に統一しています。

──ベージュは標準仕様よりも茶色みを上げているんですよね。

松村:はい。黒の色味は変更していません。

──全体的にツヤが抑えられた印象を受けました。

松村:質感の変化は付けていないですね。このクルマに高級感やメッキ感は似合わないと思ったので、付けるとしても黒のツヤくらいに抑えて、道具っぽく感じてもらえるようにしました。

──チェック柄の生地は荷室もシートも一緒ですか?

松村:はい。なお、ターボ車は合皮とのコンビネーションになりますので、縫い目以外はほぼフル撥水になります。一方でNA車は無地の部分もファブリックですが撥水はしないので、そこだけお気をつけいただければと。

──内装をチェック柄だけに絞るのは新しいですよね。

松村:だいぶ振り切りました(笑)。

──シートカバーでさえ無地のものを用意していないのは攻めていると思いました。

松村:「黒内装もないのか」という感じだと思いますが(笑)、最初にN-BOX JOYのキャラクターを出すうえでは、ベージュのチェック柄で印象づけたいと思いました。そこからの発展は今後検討されると思いますが、まずはこのJOYらしさを最大限出しています。

──サイドパネルの下側はブラウンで、上側とルーフライニングはブラックになっていますね。

松村:そうなんです。それは、バックドアを開けて荷室から外を眺めることを想定していて、室内の上半分をブラックにすることで写真のフレームのように見せ、室内から眺める景色を際立たせるためですね。下側をブラウンにしたのは、ブラックでは足で蹴った時に泥汚れが目立つのでそうしましたが、色味は抑えています。

──このブラウンとブラックは新たに色を作ったんでしょうか?

松村:ブラックはカスタムと同じですね。ブラウンの色は、N-WGNのインパネトレーから流用しています。

──開発は標準仕様やカスタムのあとにスタートしたんですか?

松村:最初から3本立てで同時に開発を始めましたが、JOYに関しては市場の動向を見ながら発表・発売のタイミングを決めました。

──これだけSUVライクなクルマが隆盛になると、用意しないわけにはいかないですよね。

松村:いかないんですが、さほどSUVではないという隙間を狙いました。

──絶妙に差別化されていますよね、コテコテのギアではないという。わかりやすく、フェンダーが樹脂になっているわけでもありませんし。

松村:ゆるく使っていただきたいと思っています(笑)。

──ホンダさんは目を三角にして運転するようなピュアスポーツカーと、それとは真逆の、N-BOX JOYのようにゆるい雰囲気のクルマを作るのが、本当に上手いと再認識しました。ありがとうございました!


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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