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内装はあえての「チェック柄」のみ! N-BOX JOYの「日常プラスαの外感」を表現するインテリアの魅力をデザイナーが語る!! (2/2ページ)

内装はあえての「チェック柄」のみ! N-BOX JOYの「日常プラスαの外感」を表現するインテリアの魅力をデザイナーが語る!!

この記事をまとめると

N-BOXに新モデルJOYが追加された

■チェック柄の撥水記事をラゲッジに採用しているのが特徴だ

■本田技術研究所デザインセンターの松村美月さんに開発背景を直撃した

N-BOX JOYはなぜチェック生地を採用?

 ホンダの超背高軽ワゴン「N-BOX」(エヌボックス)に追加された、新たなクロスオーバーモデル「JOY」(ジョイ)。同車の最大の特徴であり、先行するライバルたちにはない個性を備えたインテリアは、どのように生み出されたのか? デザインおよびCMF(カラーマテリアルフィニッシュ)を担当した、本田技術研究所デザインセンターの松村美月(まつむら みつき)さんに聞いた。

──N-BOX JOYにはチェック柄の撥水ファブリックシート表皮(注:NA車はトリコット表皮、ターボ車はプライムスムースとのコンビネーション)が全車標準装備で、しかもこの表皮は後席裏側や荷室のスライドボードにも使われています。その狙いは?

松村:N-BOX JOYはコロナ禍を経て開発されましたが、その間に価値観の変化があり、そのひとつに、外の空気を吸ってのんびり過ごしたいというものがあると捉えています。たとえば、キャンプ道具をたくさんもって遠出するまではしたくないけれど、ベランダでご飯を食べるだけでも気もちいいという、そういった心の変化をどうN-BOXを採り入れるかを考えました。

 N-BOXがもつ最大の強みは空間の広さですが、それを活かしてもっと新しい使い方ができないかということで、後席を倒したら荷物を載せるだけではなく、人が車内に入り込んで座ってみたら、天井も気にならず空間も狭くないことに気づきました。

 そこから、ベランダでご飯を食べて気もちいいことに近い、ピクニックのようだという発想が生まれ、チェック柄のレジャーシートを敷いてみたら、本当はただの黒い空間がチェック柄になるだけで、乗り込んで座ってみたいという楽しい雰囲気が出たんですね。

 ですが、クルマのなかにただレジャーシートを敷いただけでは、座るとズレるんですね。毎回後席を倒してレジャーシートを敷くのも煩わしいので、「ならいっそのこと付けてしまおう」と、後席の裏側にチェック柄のレジャーシートを貼り付けて、1年を通してどんな体験や使い方ができるか、どういう景色が見えるかを発見して、今回のチェック柄を仕上げていきました。

 また、N-BOX自体が幅広いお客様に使っていただいているので、JOYも同様にしたいという思いから、チェック柄も女性らしくも男性らしくもない、ジェンダーレスで使っていただける色や柄にすることを目指しました。

 ベージュの色も、彩度が高ければ鮮やかすぎてポップに見えるので、できるだけトーンを落としてアースカラーに近くしているんですが、よく見ていただくと……。

──……青とオレンジが細く入っているんですか?

松村:青とオレンジは色相のなかで補色の関係にある色を混ぜているんですね。そうすることでグレートーンにして色味を落としています。

 さらに、ベタ塗りのベージュでは汚れが付いたら目立つんですが、3色くらい入った複雑なカラー構成になっているので目立ちにくいんですね。そういう機能性も付与してできあがったのがこのチェック柄生地です。

──ただのベージュではない、かなり計算されているんですね。

松村:はい(笑)。このチェック柄もたくさん研究開発しており、たとえば線が細すぎると女性らしく見え、太くて分厚いと無骨で男性的に見えるので、柄も老若男女問わず親しんでいただける色柄を開発したいと思い、N-BOXのなかに入れたときのバランスを見ながら仕上げています。

 通常の荷室は黒の不織布ですが、この上にお茶やコーヒーをこぼすと完全に染み込んでシミになるんですね。匂いも取れなくなるんですが、このチェック柄の生地には撥水機能もあるので、こぼしたらすぐ拭き取っていただければ元の状態に戻ります。ですから「チェック柄だから汚したくない」と思う必要がなく、気楽に使ってもらえる生地になったと思っています。この撥水機能は必ず付けたいと考えていました。

 季節に関しても、暖かそう、あるいは冷たそうに見えず、一年を通じて使っていただきたいので、毛羽立ちや触り心地を含めた見た目を考慮して作っています。

──このチェック柄の生地ははがせるんですか?

松村:いえ、はがせません。完全に一体成形されて、生地も縫製されているので。

──撥水機能の寿命はどのくらいですか?

松村:使い方にもよりますが、通常の使い方ならば数年程度は持続すると思います。ホンダでもフィットクロスターなどに採用しているものと同じですね。

 見た目がスポーティでギアっぽい、ビニールっぽいと、いかにも撥水しそうに感じると思いますが、そうするとリラックスする気もちが湧きにくくなるんですね。ですので、見た目もちゃんとファブリックで優しい感じがしながらも撥水する、というのが肝になっています。

──撥水機能が落ちた場合、そのメンテナンスや再加工はできますか?

松村:部品にもよりますが、シートの場合はシートごと交換する必要がありますね。

──コーティングをかけ直せばいいというわけではない……?

松村:表面にコーティングしているわけではなく、作った表皮を撥水剤にドブ漬けしています。なので、たとえばクーラーボックスを生地の上で引きずっても、コーティングが削れることはありません。

──N-BOXはもともとアウトドア系、外遊びする人に多く選ばれているクルマなのでしょうか?

松村:ギア感が強いものが欲しい方がN-BOXを選ばれることは少ないと思います。むしろ「もう2世代もN-BOXに乗ったので、3世代目は新しい、何か違うものに乗りたい。でもN-BOXがいい」というお客さんが結構いらっしゃったので、その観点でJOYが生まれました。

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