見た目を裏切らない走りに痺れた
サスペンションはフロントがストラット、リヤはFFがトーションビーム、4WDはダブルウイッシュボーン。ミッションは斬新な操縦桿デザインのフロア式4速AT。タイヤは205/55R16または195/65R15。2ZZ-GE型にはステアリングでギヤ操作が行えるスポーツステアシフトマチックも設定されていた。
インテリアも斬新だ。繰り返すがシフターは操縦桿のようなL字デザインで、メーターも戦闘機を彷彿させるグラフィックが用いられていたのである。いい方を変えれば子供っぽいが、そこがまた男の子に刺さったはずである。
安全装備としては全車にデュアルエアバッグ、フォースリミッター&プリテンショナー付きシートべルト、ブレーキアシスト、EBD付きABS、ブレーキアシストを標準装備する。2001年4月の発売当初の価格は175~205万円であった。
なお、「WiLL VS」には100台限定でマニュアル車が用意された「レッドスペシャル」や「ホワイトスペシャル」というレアなモデルも存在した。
そんな「WiLL VS」の走りは、当時のカローラより遥かに煮詰められたものだったと記憶する。前席に限ればシートのかけ心地はいいし、足まわりもベースのカローラに対して専用化され、操縦性も、硬めの乗り心地もまずまずのレベルに仕上げられていたのだ。エンジンやATはカローラ譲りのはずだが、カローラに対してグレードが少なく、タイヤも2種類だったことが、走りの煮詰めがしやすかったということだろうか。ただし、後席は頭上方向に余裕がなく、ウインドウが小さく、閉鎖感のあるものではあった。前席優先に割り切ったパッケージングといえるだろう。
ちなみに「WiLL」シリーズ第3弾は2002年10月に発売された「WiLLサイファ」。ディスプレイ型ヘルメット、サイバーカプセルをコンセプト、テーマとした、初代ヴィッツのプラットフォームを用いたハッチバックタイプのコンパクトカーで、トヨタ初の車両情報通信サービスの「G-BOOK」に対応し、話題を呼んだ。その後、パッソや2代目ヴィッツの登場もあり、2005年7月に生産終了。「WiLL」プロジェクトも終了している。
中古車情報サイトで「WiLL VS」を検索してみると、8台がヒット。100万円以下からの値付けだった。今、乗っても、かなり目立つクルマであることは間違いない。ステルス戦闘機をモチーフにしたエクステリアデザインもさることながら、トヨタマークが付いていない無国籍風の1台だからだ。