この記事をまとめると
■マクラーレンからF1やP1の系譜を継ぐスーパーカーが登場
■マクラーレン史上最強の1275馬力&1340Nmを発生するハイブリッドパワートレイン
■価格は200万ポンド(約3億9000万円)で399台限定販売だが既に完売済み
「1」の系譜をさらなる高みに引き上げる究極のスーパーカー
SUVが全世界で人気の絶頂にあり、フェラーリやアストンマーティンといった由緒正しいスポーツカーメーカーすらもがSUVをモデルラインに加えるなかで、マクラーレンはラインアップすべてがスポーツカー(スーパーカー)という硬派なメーカーだ。もともとレーシングコンストラターから派生したメーカーである同社のモデルはその高性能に定評があるが、そのなかでもモデル名に「1」がつく別格なモデル群が存在する。
その端緒は30年以上前に遡る。1992年にマクラーレンの市販車部門の処女作として登場した「F1」は、レースの技術を反映した世界最高のロードカーを目標として開発された。世界初のカーボン製シャシーやセンターシートレイアウトなど画期的な技術を引っさげて登場したF1のパフォーマンスは群を抜くものであり、世界を震撼させることとなった。
その後、マクラーレンの市販車部門はいったん途絶えることとなるが、復活後の2013年に送り出された「P1」も、フォーミュラの技術が惜しみなく投入されるとともに超高性能ハイブリッドシステムをいち早く取り入れた画期的なモデルとなり、またしても世間の度肝を抜いてみせたのだった。
そして、その「1」の系譜を継ぐひさびさの新作が、このマクラーレン「W1」というわけである。
否が応でも期待が高まるW1だが、まず気になるのはそのパワートレインだろう。
今回もP1同様ハイブリッドシステムを採用したパワートレインであるが、その内容はまったくの別もの。
新開発となる4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは9200rpmもの高回転を許容し、単体でも928馬力/900Nmという目眩のしそうなスペックシートを掲げるが、さらにモーターの力が加わることでシステム出力はマクラーレンの市販車史上最高の1275馬力/1340Nmを発生する。そして、この途方もないパワーは驚くべきことに後輪のみを介して地面に伝えられるという。そう、W1はMRレイアウトをとっているのだ。
1000馬力クラスのいわゆるハイパーカーは、多くが4WDレイアウトを採用する。それでも1輪あたりの担うパワーはかなりのものとなるが、なぜあえてW1は後輪駆動としたのだろうか。マクラーレンは以下のように述べている。
「競合他社が前輪駆動のアシストに目を向けている時代に、これほどのパワーとトルクを備えた車で後輪駆動シャーシの純粋さを維持することを選択することで、従来の常識に挑戦しました。後輪駆動のスーパーカーに匹敵するダイナミックなパフォーマンスでこれほどの加速を達成できたのは、後輪のみにパワーを供給して最高のパフォーマンスと究極のステアリング精度に到達するという、F1での長い歴史を持つマクラーレンだけです」
後輪駆動でも最高のパフォーマンスを発揮できるクルマを作ってみせたというわけだ。その証左の一部として、0〜100km/hの加速タイムは2.7秒、0〜200km/hが5.8秒であると公表されている。たしかに、4WDのハイパーカーに勝るとも劣らないタイムである。
この自信に満ちた声明をみると、後輪駆動という選択はハイパーカー市場に対してマクラーレンが叩きつけた挑戦状のようにも思える。