まるでメーカー謹製痛車!? BMWが長年手がける「アートカー」は単なる「遊び」じゃなかった (2/2ページ)

BMWはアートカーでクルマによる新しい文化の情勢を目指す

●アートとデザインの新しい融合を目指す

 こうして展開されるアートカーの意義はどこにあるのか? これは間違いなくクルマを通した新しい文化の醸成といえます。

 たとえば2008年、BMWアートカーコレクション30周年記念ワールドツアーの展覧会が日本で行われましたが、このときの会場構成を担当したのが気鋭の建築家である青木 淳氏。ここでは、建築・空間デザインとクルマの融合が試行されたのです。

 また、2023年にはBMWアートカーとスポーツシューズで知られるプーマとのコラボレーションが行われ、スニーカーやジャケット、Tシャツなどの商品展開が行われました。すなわち、クルマとファッションデザインとの融合です。

 クルマのスタイルはともすると「好き嫌い」で語られがちですが、カーデザインはプロダクトデザインの領域であり、そこには文化的な側面が存在します。欧州ではもともとアートやデザインなど、生活のなかに文化が根付いており、クルマもそうした視点で語る土壌があったと思えます。

 近年、日本でも同様の動きが見られ、レクサスは2013年から独自のデザインアワードを創設しましたし、マツダの前田育男氏(前デザイン本部長 現シニアフェロー ブランドデザイン)は著書「デザインが日本を変える」で、広義のデザインがモノ作りだけでなく、企業のブランド力にも影響すると語っています。

 クルマを単なる移動手段や趣味の対象に止めることなく、豊かな文化を創り出す上質なプロダクトとして捉える。BMWのアート・カーは、50年間を掛けて着実にその役割を果たしているのです。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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