ハンドリングは仕様によって異なる
2)のハンドリング改善については、従来モデルのステアリング操作初期ゲインが強く、直線走行時に落ち着かないというユーザーからの声を反映させ、ステアリング操舵ゲインを落として直進安定性を高めている。
実際に走らせてみると、確かにステアリングセンター付近の安定感は高まっていて、重厚感が増すことで質感も向上していると感じた。ただ、この様子は7人乗り3列シート仕様と5人乗り2列シート仕様では若干様子が異なった。3列シート仕様では後輪荷重が40kg以上増え、後輪の接地荷重も大きい。これがコーナリング中もつねにリヤタイヤの接地性を確保しているので安定したライントレースが可能だった。
一方で2列シート仕様では後輪荷重が少なく、とくにコーナーへのアプローチ区間、ブレーキングで前荷重にしてからのターンインで後輪が接地性を失い、急激なヨーの立ち上がりを引き起こした。カウンターステアを当てる必要があるほどのヨーレートは、直進安定性の向上と相反してコーナリング初期の安定感を削いでしまっている。
2列3列仕様どちらも旋回中の車体ロールは大きくなっていて、個人的には従来のハンドリングのほうが好みに合う。今回バッテリーの容量アップに伴い、車高が5mm上がった。欧州への輸出を鑑み180km/h以上の高速域でエンジンフードがバタつくのを抑えるため、軽量なアルミ製だったエンジンフードを鉄製のパネルに変え、3kg重量アップしたことで重心位置が相対的に高まっていることが影響したといえる。
3)の装備については、従来モデルも十分以上なクオリティの内装を誇っていたが、さらに上品質なインテリアとすることで欧州プレミアムブランドからの乗り換えユーザーにも納得してもらえる質感を与えている。また、ヤマハと共同で開発したオーディオシステムと、その音質向上のためにドアパネルに補強を加えたことも質感向上に寄与しているといえる。
このように進化したアウトランダーPHEVはおもに3つのポイントにおいて改良を施しているが、キーとなるのはバッテリーの容量アップとパワートレインの出力向上だろう。前後2モーターを独自に制御し駆動するが前後輪に直結感が感じられるのは三菱のシステムだけだ。さらにS-AWC制御により旋回特性も自由自在だ。
今回の改良では若干オンロードでの特性が改められてしまったが、フラットダートや雪道など低ミュー路においては相変わらずの高い運動性能を発揮できるはず。冬季には雪道の走行試乗を実施してリポートしたい。