この記事をまとめると
■クルマが発生させるノイズや振動の原因は大きく5種類に分類できる
■主な解決方法は発生源をつぶすか音の侵入を防ぐかのふたつの手法が存在する
■ノイズの場所と種類によっては部品交換の目安になる場合がある
車内を静かにするには音の正体を把握する必要がある
「エンジンの振動が好き」と主張するクルマ好きも存在しているが、現実的にクルマは静かで滑らかに走る方向に進化してきている。たとえば、はじめて電気自動車(EV)に乗った人が「エンジン車では考えられないほど静かで驚いた」といった感想をもつことは珍しくない。もちろん、静かでスムースすぎて運転している感覚が希薄になる、という批判もあるが、ほとんどのユーザーは静かであることをポジティブに評価している。
そして、EVになると圧倒的に静粛性が増すということは、そもそもクルマの騒音源の多くがエンジンに由来していることを意味しているといっても過言ではないだろう。エンジンに加えてトランスミッションまで含めたパワートレイン由来のノイズというのは本当に耳に届きやすく、音量的にも大きめとなる。しかも低速からずっと耳に届く騒音発生源といえる。
パワートレイン由来以外の主なノイズ発生源としては、ボディ内装類などのキシミ音、サスペンションやブレーキなどの足まわり系、ドアミラーといった突起物から聞こえる風切り音、タイヤ由来のノイズなどが挙げられる。そして、それぞれに対策となる定番手法がある。
パワートレイン/ボディ/足まわり/風切り音/タイヤと5つの原因ごとに主な対策について見ていくことにしよう。
「内燃機関」という日本語表記からもわかるよう、エンジンを軸とするパワートレインは、燃焼による熱エネルギーを運動エネルギーに変換する構造となっている。そのため、燃焼由来のノイズなどは避けられない。エンジンの回転数が変化することによる振動は常に発生しているし、トランスミッションなどの駆動系においても同様だ。また、エンジンで発生したエネルギーの一部は排気として放出されるが、その際にも大きなノイズを生み出す。
物理的な対策としては、エンジンやトランスミッションを支えるマウントへの工夫が挙げられる。基本的にはゴム製となるマウントだが、形状的な改良やサイズに余裕をもたせることでパワートレインの振動を抑制できるし、高級車になると電磁石などによってマウントの硬さをコントロールする可変タイプなども採用されている。
おおもとの振動は、エンジン回転による影響が大きいため、回転数を低く、なおかつ一定になるような制御もパワートレイン由来のノイズ低減には効果的といえる。一般的にいって、MT車よりもCVTのほうが滑らかに走れるのは、エンジン回転数の変動を抑えているからだ。
また、ほとんどのクルマでエンジンはキャビンの前方に置かれている。そこでエンジンルームとキャビンの間にあるダッシュパネル(バルクヘッド)に吸音材などを配することで音の侵入を防ぐといった対策もなされている。
そして、こうした吸音材や制振材によるノイズ対策はボディ全体で実施されている。キャビンのフロア部分はもちろん、ラゲッジルームからのノイズの侵入を防ぐためにホイールハウスにも吸音材が貼られているクルマが増えている。もちろん、こうした部材を足すことでのノイズ対策はコストアップ要因となる。高級車ほど静かで大衆車になるとうるさいと指摘されることが多いのは、どちらがノイズ対策にコストをかけられるのかを考えれば明らかだろう。