お付き合い程度の飲酒なら運転行為も大丈夫という認識があった
ひとつ筆者の見かけたシーンを思い出してみると、某社のパーティにおいて、某有名自動車雑誌の創刊に関わった著名な人物と同席したことがあった。その人物、グラスにつがれたワインも口をつけていたので、筆者は公共交通機関でやってきたのだなと思っていた。しかして、帰路につこうと筆者が駐車場に向かうと、なんとその著名人氏が運転席に座って走り出していたのだ。
このエピソードから「老害がとんでもない違法行為をしていた!」と断罪するのは早計といえる。なぜなら1990年代において酒気帯び運転の基準となっていたのは、【呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25ミリグラム以上】だったからだ。厳密に計測したときの結果はさておき、お付き合い程度にワインを口に含むくらいでは、酒気帯び運転にはならないと判断するのが妥当と思われていた時代だった。
筆者的には、当時から自動車メディアに関わる著名人であれば、飲酒運転を疑われるような行為は慎むべきと思っていたが、世間的にはそこまで口うるさいことをいわなくても……という雰囲気であった。それが20世紀のスタンダードだったといえるかもしれない。
しかし、21世紀になって飲酒運転を根絶すべく、酒酔い運転や酒気帯び運転の罰則はどんどん厳しくなっていった。2002年には、酒気帯び運転の基準が【呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上】と引き下げられ、2009年には飲酒運転に対する行政処分が厳しくなった。並行して、飲酒検知拒否の罰則を厳しくするほか、飲酒運転を助長する行為に対する直罰化など、飲酒運転根絶に向けた法改正が進んでいった。
なお、現時点での飲酒運転に対する罰則と違反点数は以下のようになっている。
【罰則】
酒酔い運転:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
【違反種別】
酒酔い運転:35点
酒気帯び運転(呼気1リットル中のアルコール濃度0.25ミリグラム以上):25点
酒気帯び運転(呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満):13点
つまり、0.25ミリグラム以上の酒気帯び運転は一発で免許取消になるレベルであり、0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満では、いわゆる免停90日相当の行政処分が下されるレベルの重大違反という位置づけになっている。
そして、酒酔い運転の35点というのは免許が取り消しとなったうえで、3年の欠格期間に相当する点数だ。少なくとも3年間は免許の再取得もできないということになる。
なお、酒気帯び運転については、呼気中のアルコール濃度という数値化された基準が存在しているが、酒酔い運転については、警察官が【飲酒により正常な運転ができない状態】と判断するルールになっている。呼気中アルコール濃度が酒気帯び運転の基準より低くても、飲酒が原因で正常に運転操作ができない状態になっていると判断されれば、酒酔い運転となってしまう可能性がないとはいえない。
冒頭でも記したように、道路交通法には『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない』と明記されている。令和のドライバーであれば、たとえひと口でも飲酒して運転することは絶対禁止! と認識しておくのがスマートといえるだろう。