ベルギーに激熱スーパーカーメーカーが存在していた! 知る人ぞ知る「ジレ」とは? (2/2ページ)

現在もベルギーの地から少量生産のスポーツカーを送り出す

 生産型のヴァーティゴは、技術的にも最初のプロトタイプからは大きな進化を遂げていた。シャシーはCFRPとハニカム素材で成型され、高剛性を誇るとともに重量をプロトタイプのそれから58kg低減することにも成功。ボディデザインもエアロダイナミクスを意識して、より滑らかなラインで構成されるようになり、サイドウインドウはより高く、そしてリトラクタブル方式のヘッドライトも新たに採用されていた。

 搭載エンジンはアルファロメオから供給を受けた3リッターのV型6気筒で最高出力は226馬力。車重は750kgに抑えられたため、その運動性能は卓越しており、1994年に行われたテストでは3.2秒の0-100km/h加速を達成。これは、当時ギネスブックに記載された記録でもあった。また、2002年モデルでは、搭載エンジンがやはりアルファロメオ製の3.2リッターV型6気筒にスイッチ。さらにそのパフォーマンスが高められている。

 同じく2002年には、1989年のブラジルGPでテスト中の事故により重傷を負った元F1ドライバーのフィリップ・シュトライフに捧げるモデルとして、「ヴァーティゴ・シュトライフ」が誕生。

 こちらはアルファロメオの3.6リッター版V型6気筒エンジンを360馬力の最高出力で搭載したもので、実際にシュトライフが購入したモデルは、ジョイスティックで操作できるATが装備されていた。ちなみにこのモデルは2007年までに25台のみが生産された。

 そして、現在のジレが生産しているモデルが「ヴァーティゴ5」と「同スピリット」の両車だ。搭載エンジンはアルファロメオ製から、フェラーリがマセラティのために生産した4.2リッターのV型8気筒に変化。注目の最高出力は420馬力に達し、一方で車重は950kgに抑えられているから、その走りがさらに過激なものになっていることは想像に難くない。

 プッシュロッド方式のダブルウイッシュボーンサスペンションや、AP製のレーシングブレーキなど、シャシーの強化に関しても万全の備え。前後のホイールは18インチ径とされ、フロントには225/35ZR18サイズ、リヤには295/30ZR18サイズのタイヤが組み合わされる。

 ベルギーの地から送り出された少量生産のスポーツカー。それは世界のライバルと比較してもまったく引けをとらない、第一線の運動性能を発揮するまさにスーパースポーツにほかならなかったのである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

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