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V型16気筒の怪物エンジンを積んだBMW! 「ゴールドフィッシュ」なんてあだ名が付けられた7シリーズの正体とは (1/2ページ)

V型16気筒の怪物エンジンを積んだBMW! 「ゴールドフィッシュ」なんてあだ名が付けられた7シリーズの正体とは

この記事をまとめると

BMWは1980年代に開発していたV16エンジン搭載車を2020年に公開した

■V16の熱対策としてトランクにラジエターを移設してボディサイドにはエアインテークを設置

■エアインテークがヒレのような形をしていたためゴールドフィッシュと名付けられた

高級車の気筒数は多ければ多いほど偉かった1980年代

 いつの時代も自動車メーカーによる技術競争はクルマ好きにとって格好の話題。とりわけ、ビックリドッキリメカや、キテレツ大発明などはのちの世代でも語り草になるわけで、とどのつまり失敗作と呼ばれるものほどヒトの口に上る機会が増えるもの。とはいえ、製品化されなかったものほどメーカーはヴェールの内側にしまいたがるものですから、なかなかお目にかかれないのも事実。

 そんななかで、BMWはだいぶ時間が経ったとはいえ、開発段階でボツになったV16エンジン搭載車を公開! 第二次大戦中の兵器競争でもあるまいに、一体BMWはなにを考えていたのでしょう。

 BMWがゴールドフィッシュ(金魚)と呼ばれる7シリーズを公表したのは2020年のことで、開発から30年以上が過ぎたタイミングでした。1980年代当時、BMWはドイツ国内で戦後初のV12エンジン(M70)をリリースしたばかりでしたが、早くもグレードアップの企画がもち上がっていたのです。

 ライバルのメルセデス・ベンツもV12エンジンは水面下で開発していたので、大戦後にメルセデス・ベンツから「ミュンヘンのエンジン屋」呼ばわり(真意については諸説あり)されてからこっち、BMWはいつだって「打倒メルセデス!」だったのかもしれません。

 また、時あたかも世界的なバブル景気の揺籃期と重なって「気筒数&バルブ数はあればあるだけエライ!」的な風潮も影響していたのは確かでしょう。

 で、M70といえば、のちにM社のパウル・ロシュのチューンアップが有名ですが、この当時は本社のエンジン開発責任者だったカールハインツ・ランゲ博士が陣頭指揮をとり、現場の開発は部下のアドルフ・フィッシャーが担うことに。

 ちなみに、フィッシャー氏はV16プロジェクトの後で850iに搭載されたM70の発展形「S70」エンジンを作り上げていますので、このV16プロジェクトが大きな糧となったはず。とはいえ、最初はランゲ博士から「作ってみてよ、16気筒」くらいの無茶振りだったことでしょう。

 ただでさえ重たい12気筒エンジンに4気筒を足すわけですから、フィッシャー氏でなくともエンジニアなら誰もが躊躇したはずです。が、BMW首脳陣は7シリーズのエンジンベイなら多少のこじつけでもって搭載できるとして、16気筒化を推進。結局、M70を2基使って、切った貼ったの大手術。フロント側の1対、そしてリヤ側2対のシリンダーをショートストローク化してエンジンのサイズを調節するという、正月のヤンキー改造もビックリな荒業が発揮されたのです。

 それでも、出来上がったエンジンは、6651ccの排気量となり、テストベンチでの測定で408馬力を発生。最初に述べたとおり、この数値はストック状態ですので、M社がするようなパーツの精査やバランス取りは行っていないそう。ゆえに、ごく順当な(かつ面白みのない)パワーアップだったといえるでしょう。

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