この記事をまとめると
■昭和の時代には街道沿いに多くのドライブインが存在していた
■ドライブインには広い駐車場とトイレ、レストランと土産物屋などが設置されていた
■高速のSAや一般道の道の駅が整備されてドライブインは徐々にその数を減らしている
トラック運転手のオアシスだったドライブイン
近年の猛暑も9月の後半になると気温が下がり始め、いよいよ待望の秋の行楽シーズンが訪れます。山々は夏に生い茂った新緑から徐々に紅葉が始まって色づき始め、それを目当てにこぞって観光客が訪れるでしょう。あるいはブドウや栗など、秋ならではの美味しい食材も最盛期を迎え、それもまた観光の目玉として多くの人を呼び寄せます。
そうして行楽シーズンには多くの人がクルマで各地を訪れることでしょう。場所やタイミングによっては渋滞に遭遇して長時間の乗車を余儀なくされることもあると思います。
そんな長距離のドライブで問題になるのがトイレと食事でしょう。高速道路なら「あと○km先にパーキングエリアあるから我慢してね」と乗り越えることができますが、一般道ではそういう設備が都合良く見当たらないケースもあったりします。
こんなシチュエーション、昭和の時代であれば「ドライブインに寄りましょうね」というのが当たり前でした。家族でクルマに乗って遠出するときに、子どもゴコロにドライブインに寄るのを楽しみにしていたという人も少なくないでしょう。
そのノスタルジーも、いまの30代以下の人には通用しなくなっている気配を感じます。「ドライブインって、なに?」といわれてしまった年配の方もいることでしょう。
ここでは、いまや絶滅を危惧されるほど数が少なくなってしまったドライブインについて、ちょっと掘り下げてみようと思います。
■「ドライブイン」をカンタンに解説
ドライブインは英語で「Drive-inn」と書きます。ドライブ中に「in」する施設かと思いきや、「in」ではなく「inn」が正解です。
「inn」というのは小規模の宿を意味する英語で、ホテルより気軽に安く泊まれる施設のことを指します。日本では「民宿」が近いでしょうか。
発祥は自動車大国のアメリカで、1920年頃のことだそうです。それまでも街道沿いにドライバー向けの店はありましたが、普通に駐車場を備えた飲食店やスーパーのような店舗がほとんどでした。ドライブインがそれらと異なる点は、訪れたドライバーのところに専門の店員がクルマまで注文を聞きに来てくれるサービスを始めたことです。いまではマクドナルドなどのチェーン店でドライブスルーが当たり前に普及していますが、当時は画期的で、瞬く間に全国に広がっていったようです。
その広まる過程でさまざまなサービスを売りにするところも出てきたりして、ベッドでしっかり休憩を取れる「inn」の施設を併設するところも多くありました。
そのドライブインが初上陸したのは沖縄だという説が有力です。アメリカの文化が米軍基地から流れてくる沖縄の風土に初めてドライブインスタイルのレストランができたといわれています。
日本では1960年代あたりから自動車による物流やレジャーなどの移動が盛んになり始め、その勢いに合わせて街道沿いにはドライバー向けの飲食店などが増えていきました。
その活況のなかで、広い駐車場とトイレを備えた、レストランと土産物屋などの複合型の店舗も生まれ、アメリカに倣って「ドライブイン」と名乗るようになりました。
そのころ、街道は多くのトラックが走っており、主要な街道は深夜の交通量もそれなりにありました。そんな「トラック野郎」たちのために、店舗が閉まったあとも休憩所として駐車場を開放しているところもあり、自販機などの無人販売でそれなりの収益を得ていたところも多かったようです。
昭和の長距離ドライブというと、観光地付近のドライブインに寄ってご当地の名物を食べたり、お土産を物色したりするのが楽しみのひとつとされていました。