ガソリンの自己着火という「夢の技術」で業界騒然となったSKYACTIV-X! どんな技術でなぜ広まらなかったのか? (2/2ページ)

話題の技術であったがメリットが少なかった

 実現のため、素早く吸気を燃焼室へ送り込む送風機を用い、また、低回転域でのトルクを補うモーター(モーター機能付き交流発電機=ISG)の駆動を加え、そのうえで、とくに高負荷運転での出力確保を目的にスパークプラグを残す、火花点火制御圧縮着火(SPCCI)と呼ぶ独自の手法で、HCCIを実用化にもち込んだ。

 一方、異常燃焼対策としてプレミアムガソリンを使う必要があり、燃料代の上昇という懸念を消費者に残した。ただ欧州では、レギュラーガソリンのオクタン価が日本より高いので、欧州ではレギュラーガソリンで使えるとしていた。

 SKYACTIV‐Xの完成は、世界初の快挙となったが、試乗してみると、出力不足を覚えさせるところがあり、燃費ではディーゼルエンジンのSKYACTIV‐Dに比べ優位性が十分でなく、また圧縮着火というディーゼルエンジンのような燃焼方式であることにより、振動騒音を意識させ、乗用車用エンジンとしての商品性は必ずしも十分でなかった。

 そのうちに、時代はより大きくCO2排出量の削減へ動き、電気自動車(EV)の期待が高まり、SKYACTIV-Xの展開は、マツダとしても必ずしも明快ではなくなってきているようだ。

 ガソリンエンジンの究極を目指したSKYACTIVの思想は、大変意義のある尊い内容だった。ただしそれは、20世紀のうちに達成されるべき目標であり、電気の時代といえる21世紀には時代遅れとなる運命にあったかもしれない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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