この記事をまとめると
■タワーバーやブレースバーはボディ剛性の強化に確実に効果がある
■ノーマルで補強バーが付いていないのはメーカーが必要ないと判断したからだ
■ノーマルのまま補強バーだけを入れるとバランスが崩れるため新たな調整が必要
ボディ剛性を強化したいなら必需品
ボディ剛性の重要さが指摘されるようになってもうずいぶん時間がたっている。この間、MRS(マルチロードシミュレーター)など、コンピュータでボディ剛性を解析するシステムも進化し、構造が変わり、板厚が増し、高張力鋼板が使用され、スポット溶接個所が増えたりして、新車が登場するたびにボディ剛性は増している。
一方で、アフターパーツでは、タワーバーやブレースバーなどのボディ補強パーツが出まわっていて、その効果が喧伝されているわけだが、そんなに効果があるのなら、なぜ自動車メーカーはそれを積極的に標準装備にしないのか? メーカーが採用しないということは、もしかして効果が薄いのか? そんな疑問があるかもしれない。
しかし、補強バーの効果は確実にあるし、メーカーもそのことはわかっている。その証拠に、一部のスポーツカーにはタワーバーもブレースバーも装着されているし、むしろブレースバーなどは、メーカーが先に採用したものを、アフターパーツメーカーが参考にしてあと追いしたといってもいいぐらいだ。
GR86やロードスターなど、フロントタワーバーやバルクヘッドブレースを標準装着しているクルマも珍しくないし、フェアレディZなどはリヤの開口部が広いので、ラゲッジスペースの収納容積を削ってまで、ごついタワーバーを入れてボディ剛性を確保している。
また、スカイラインGT-R(R33、R34)は、フロントクロスバーやフロアトンネルステイ、フロアクロスバーなど、フロア部分に補強バーを入れたパイオニア的存在でもあった。
そうした補強バーを、なぜもっと多くのクルマに採用しないのか。結論からすると、普通のクルマには必要ないとメーカー側が考えているから。
ボディというのは固ければ固いほどいいわけではなく、どこかでしなって、入力を逃がすこともじつは重要。補強バーをつければ、重量も部品点数も増えるし、組立工数も増すことになるし、整備性も悪化する。また、クラッシュしたときの変形による衝撃吸収効果も十分考えられているので、それらをトータルで考え、補強バーが必要であると判断したクルマには補強バーを設定し、不要と判断したクルマには補強バーを取り付けない。
シンプルにこれだけの話だと思えばいい。
ノーマルエンジン、純正装着タイヤ、純正サスペンションのまま走るのであれば、ノーマルのボディ剛性で十分バランスが取れているので、追加の補強は必要ない。
むしろ、ドノーマルのまま補強バーを入れるとすると、必ずどこかでバランスが崩れるので、補強を前提にしたダンパー、スプリング、ゴムブッシュなどを考える必要があるだろう。
もちろん、エンジンをチューニングしたり、ハイグリップタイヤへの交換、あるいはタイヤのサイズアップ、さらにはサスペンションチューンなどを行う場合は、ボディ補強が有効になるのは間違いないが、どこをどれだけ補強するかは、よくよく吟味することが必要だ。やたらと補強バーを入れまくった場合、むしろ少し補強バーを外したり緩めたりしたほうが、ハンドリングがよくなったり、剛性感が出ることもあるので、ボディ補強の世界は奥深いということだけは覚えておこう。