最近弱ってきたな……じゃなくて元気だったのに突然死! クルマのバッテリーがいきなりダメになる理由と避けるための対策とは (2/2ページ)

バッテリーを元気な状態で保つために必要なこと

■劣化の予兆は確認できるのか?

<バッテリーの健康診断項目>

1:電圧の測定
2:CCA(コールド・クランキング・アンペア)の測定
3:内部抵抗の測定
4:バッテリー液の状態(量・色など)の確認(※鉛バッテリーのみ)

 バッテリーの健康状態を調べる方法は主にこの4項目になります。

 まずは1の電圧について。この項目はクルマのエンジンにたとえるとアイドリングの安定感です。アイドリングというのはエンジンが動くための力が1番低い状態なので、エンジンのどこかにちょっとした不具合が起こると、アイドリングに影響して不安定になります。

 バッテリーの発電性能が落ちると、一定の電圧が保てなくなって基本の電圧が下がってしまいます。12Vの鉛バッテリーの場合は健康な状態の目安がだいたい12.6V以上とされており、12.5Vを下まわると健康状態に黄色信号が点ります。電圧が低ければ低いほど劣化が進んでいると考えていいでしょう。クルマのバッテリー警告灯もこの電圧低下を監視していて、その多くは12.0Vを下まわると点灯するようです。

 2のCCAというのは「コールド・クランキング・アンペア」の略で、要するにどれだけ多くの電気が流せるかという放電性能の基準値です。

 具体的には、「摂氏-18℃の環境でバッテリーを30秒間定電流放電させて、そのときの電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値」となっていて、その値が大きいほど多くの電流を安定して放電できるということになります。

 この値は、クルマのエンジンでたとえると加速力になるでしょうか。エンジン内部パーツの摩耗などによって圧縮が落ちてくると本来のパワーが発揮できなくなり、加速力が鈍ってきます。

 この数値を測定するには専用のテスターが必要になるので、それを購入するか、カー用品店や整備工場、ディーラーなどに行って計測してもらうことになります。

 3の内部抵抗というのは、バッテリーの発電を妨げる要因の大きさです。クルマのエンジンでたとえるとフリクションロスが該当するといっていいでしょう。

 そのフリクションロスはバッテリーでいうとサルフェーションや電極版とバッテリー液の劣化などです。それが進行すると化学反応自体が鈍くなり、本来の性能が発揮できない状態になります。

 内部抵抗もその機能をもった専用のテスターで行います。ザックリとした基準は10mΩで、それよりも大幅に大きい場合は内部の劣化が疑われます。

 最後にある4のバッテリー液の状態は、クルマのエンジンでたとえるのは難しいですが、燃料の濃さが近いでしょうか。インジェクターやセンサー類に不具合が起きると、エンジンが好調にまわせなくなってしまいます。

 実際のバッテリーでは内部で化学反応が起こっています。なかに満たされているバッテリー液の状態が悪いと十分な発電が行えません。

 そのバッテリー液の状態を確認するには、まず目視でのチェックです。色は基本的に無色透明なので、黄ばんだり白っぽい感じに色味が付いている場合は変質している可能性があります。

 そして、重要なのがバッテリー液の量です。健康な状態なら規定量から少し低いぐらいだと思いますが、極端に減っている場合は何らかの不具合が起きている可能性があります。単純に電極板が液に浸かっていない部分は発電できないので液を足してやる必要がありますが、ここで注意しないとならないのは液の比重です。

 バッテリー液は「希硫酸」で、その濃度はバッテリーの充電状態で変化します。濃度は重さと比例するので、専用のスポイト状の器具を使ってその比重を調べてから、濃ければ精製水を足して薄めたりする必要があります。

 このとき、色は透明で量は十分、そして比重が適正なのに電圧が低いという場合は、電極版に劣化やサルフェーションが進んでいる可能性が高いので、液の補充では復活できない可能性が高いでしょう。

 ただ、最近ではこの液を補充しないで済む密閉型のバッテリーも増えています。

■「突然死」を防ぐことはできるのか?

 前述のように、進化したいまのバッテリーはギリギリまで性能を維持する工夫がされているので、お亡くなりの時期の見極めが困難なケースが多いようです。そのため、日常でクルマを使っていて感じる情報だけでは劣化の兆候をつかみ取るのはカンタンではないでしょう。

 しかし、車検や点検のタイミングなどで定期的にバッテリーの診断を行えば、数値で劣化の具合を予測することは可能です。

 また、バッテリーの劣化はバッテリーだけが原因ではなく、充放電の具合によっても大きく左右されます。たとえばスマホの充電器などの機器を使うためのアクセサリーを装着したり、あと付けのナビゲーション、オーディオシステムの追加などで電力消費が増えると、もとの車両の想定電力消費量を大きく上まわることもあります。その場合は常に放電が多くなった状態となりますので、サルフェーションなどの劣化が進むでしょう。

 あとはここ近年の夏の猛暑でクーラーをガンガン利かせているような状態もバッテリーにとっては過酷です。熱は化学反応を促進させますので、劣化に関わる物質の精製の割合も多くなるでしょう。

 それらのことを踏まえて、バッテリーに優しい環境を考えてクルマを運用してやれば、突然死を遠ざけられると思います。

 以上は鉛バッテリーを中心とした解説ですが、いまはその鉛バッテリーの進化版といえるドライバッテリーやカルシウムバッテリー、PCやスマホなどの電子機器に多く使われているリチウムイオン電池、そしてリン酸鉄バッテリーなど、さまざまな方式の高性能な製品も出てきています。

 それぞれが異なる特性をもっているものなので、もし鉛バッテリーからそれらに換える場合は、しっかりと特性と取り扱い方法を把握しておきましょう。最悪の場合は突然死どころか、発火してクルマが全焼、なんていう惨事になる可能性もあります。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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