この記事をまとめると
■トラック業界の課題とされていた「2024年問題」
■働き方改革関連法が適用され状況は変わったのか推察
■運送関係者と一般消費者を対象とした意識調査の結果をまとめた
働き方改革関連法が適用され約半年が経過
かねてよりトラック業界の重要課題になっていた「2024年問題」。これは、2019年に施行された「働き方改革関連法」の物流・運送業界への本格適用が、2024年4月1日から始まったことに端を発する。この日を境にトラックドライバーの時間外労働の規制が強化され、年間960時間を超えた時間外労働ができなくなった。
長時間の運転や積み降ろし作業、荷待ちの拘束など、以前から過酷といわれてきたトラックドライバーの労働環境。それが改善されるというのは一見いいことのように思われるが、その影響でドライバーとトラックの稼働時間が短くなり、かつ輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が指摘されてきた。
また、ドライバーにとっても労働時間が短くなることで「稼ぎが減るのでは」という懸念がある。4月1日にこの働き方改革関連法の本格適用が行なわれて半年ほどが経過。トラック業界やその物流の恩恵を受ける一般消費者の間では、どのような影響が起こっているのだろうか?
神奈川県トラック協会では、この度同県の運送関係者1035人と一般消費者3000人に「物流の2024年問題」に関する意識調査を実施した。その結果、一般消費者と業界関係者との間での同問題に関する意識のギャップが浮き彫りとなった。
とくに顕著だったのが物流の2024年問題そのものの存在。運送関係者はその85%が内容まで理解していると回答した一方、一般消費者のおよそ3人にひとりが「名前も知らない・内容も知らない」と解答。とくに若年層の理解が低いという結果になった。
とりわけ、ドライバーの負担の代表的な存在となっている宅配便の再配達などは、消費者の認識が変わらず低いということも顕著になった。業界内では再配達を削減するなど効率的な運送に向けて動いているが、この意識調査にて運送関係者から「再配達を有料にしてほしい」と理解を求める声がある一方、一般消費者の3人にひとりが「再配達料金を追加で払うなど考えられない」と解答。置き配の一般化など、再配達の削減へ向けた対策は進んでいる一方で、消費者の間では「宅配はタダで受け取るのが当たり前」という認識が根強いようだ。
また、2024年問題やその一因でもあるトラックドライバー不足の解決法について運送関係者に尋ねると「運賃や送料の見直し」「ドライバーの待遇改善」を求める声が多く集まった。「ドライバーの賃金面での待遇改善と「荷待ち」による待機=拘束時間の問題を解決しないと、これからもさらに人手不足になる」「運送会社の取り組みだけでなく、荷主の理解(待機時間の削減と運賃値上げ)と協力がなければ、この問題は解決しない」など、その解答からは運送業界の労働環境と、1990年の規制緩和から下がる一方だった運賃の改善を強く求める、現場からの深刻な訴えも明らかになった。
大手運送会社や日本郵便など、一部では運賃の値上げや運送(配達)期間の延長など具体的な改善策が進んではいるが、まだ業界全体では2024年問題の根本的解決までは進んでいない。これを実現するには、運送業界と荷主だけでなく、一般消費者との間の意識のギャップも埋めなければならないのは明らかだ。