この記事をまとめると
■トラックのキャビンのルーフ部分が膨らんでいることがある
■キャビンのルーフ部分の膨らみは「ハイルーフ」と呼ばれる装備だ
■ショートキャブの車両にはとくに大きなものが採用されていることも多い
室内の快適性を向上する「ハイルーフ」
高速道路や国道を縦横無尽に走る大型トラック。そのキャビン(運転席の部分)のルーフの部分が大きく膨らんでいるものを見かけることがある。これは「ハイルーフ」と呼ばれる装備で、室内を高くすることにより収納スペースを増やしたり、車内で立ち上がっての着替えなどを容易にするなど、快適面でのメリットを多くもっている。長距離を走る大型トラックのドライバーにとっては、キャビンは仕事場であると同時に寝食をともにする生活スペースでもある。そのゆとりと快適性は、仕事への効率にも深くかかわってくる。また、ハイルーフ装備車はその形状から、走行中の空気抵抗を抑え、燃費低減にも効果をもつ。
そんなハイルーフ装備のトラックのなかで、とりわけ大きなルーフをもつ車両を見たことのある方も多いことだろう。「ルーフに窓もついてるし……、もしかして2階建て?」とその正体も気になるのでは? この大型車のルーフ、日野のプロフィアは「スーパーハイルーフ」、三菱ふそうのスーパーグレートは「スーパーマルチルーフ」、いすゞは「マキシルーフ」とそれぞれ固有の装備名をもつが、その内部はどのメーカーの車両も、ドライバーの仮眠、休憩スペースとして開発されている。運転席の上のスペースなので、2階建てというのもあながち間違いではない。
ここではスーパーハイルーフと呼ばせていただくが、このルーフは「ショートキャブ」と呼ぶ、キャブの前後サイズを短くし、ボディ(荷台、荷室)のスペースをより多くとっている車両に装備されている。通常の中型・大型トラックは運転席の後ろに寝台と呼ばれる休憩スペースを設けているが、スーパーハイルーフ装備車はそのスペースの寸法を荷物の積載を優先し、休憩スペースは運転席の上にオフセットしている、というわけだ。
スーパーハイルーフは運転席と完全に独立させた休憩スペースで、そのぶんフロアも広く取られているが、実際にこのようなトラックに乗務しているドライバーの間では「夏場はものすごく暑くなる」「雨音がうるさい」「ルーフに上がるアクセスが面倒。落ちそうで怖い」「ショートキャブは背中が圧迫されるし、リクライニングできないのが辛い」とネガティブな意見も少なくない。
ショートキャブ車はそもそも積載性を高めるためにキャビンを「ショート」にし、快適性を二の次にしたトラック。高速道路などでそのタイプのトラックを見るたび「これでの長距離の仕事はきついだろうな……」と思うのは、筆者だけではないはずだ。
「トラック魂」に登場するデコトラで働くトラックドライバーたちは、自身の愛機を快適な生活空間にするために、助手席を寝台と一体化する「フラット化」にするなど、インテリアにさまざまな工夫を凝らしている。そういったトラッカーたちの愛機は、すべてスーパーハイルーフではなく通常のロングキャビンのハイルーフもしくは標準ルーフを採用している。
ここ数年、大型トラックもフルモデルチェンジし、新たなラインアップに刷新された。そんな現行モデルのサイトを見ると、どのメーカーもスーパーハイルーフは探さなければわからないようなところに紹介され、あまり積極的にセールスしているようには感じられない。2024年問題、働き方改革の影響が、ここにも出ているように感じられる。