サンダーバードの「磁力牽引車」かよ! 6代目ダイナの「超低床キャビン」が衝撃のスタリングだった (2/2ページ)

乗降性を高めた「ドライバーにやさしいクルマ」

 このころにはトラックも、ドライバーの労働負担軽減といった考え方が強まり、操作性や使いやすさなどにもさまざまな工夫が凝らされていた。同時に、多様化した輸送形態に対応するべく、クイックデリバリーのような車両が、運送事業者のニーズに合わせて開発されるなどしていた時期でもある。

 1997年5月、ダイナ・トヨエースに「超低床キャビン」が新たに設定されるという発表があった。まるで、サンダーバードに出てくる磁力牽引車のような未来的外観に驚愕した人も少なくない。トヨタは、当時の発表で「EASY RIDING(乗降性の格段の向上)を狙いに開発し、キャビンを前輪より前へ配置するという新しい発想」と謳い、「頻繁な乗降にも疲労の少ないドライバーにやさしいクルマ」であるとPRした。

 また、「キャビンを前方へ移動(従来比:標準キャブ690mm)したことで荷室長の延長も可能」になり、アルミバンタイプは1クラス上の荷室長を確保したという。ちなみに、「超低床」となったキャビンは、標準キャブに比して85mm下がっている。要するに、ドライバーにやさしく積載効率も高いという、まさに一石二鳥のトラックだというのだ。

 このトラックをデザインしたという方が「X(旧:Twitter)」で語ったところによると、「コカ・コーラからの要望があって開発、佐川急便にも納入し、全200台ほど生産した」とのことだ。ただ、トヨタの75年誌では「需要が想定したほど無かった」ため、7代目にフルモデルチェンジされるときには引き継がれなかったという。

 確かに、ドライバーにとって乗降は楽になるようだが、前輪位置が運転席の後部になると、ハンドリングに違和感が発生することも考えられる。とはいえ、注目度は高いので社名や商品名などを入れた看板車にすれば、一定の広告効果が期待できるだろう。

 古い話なのでトヨタ社内にも知る人はいないとのことだったが、個性が重視されるこの時代であれば、受け入れられるのではないだろうか。復活に期待したいものだ。


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