この記事をまとめると
■運送事業者には運行管理者を配置する義務がある
■目的は事業用自動車の安全の確保だ
■「運行管理者」の役割について詳しく解説する
「運行管理制度」によって定められている
運送事業者は道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づき、運行管理者を置いて事業用自動車の運行の安全を、確保しなければならないと定められている。これを「運行管理制度」という(国土交通省所管)。
「安全運転管理者制度」と混同されることがあるが、これは警察庁所管の道路交通法に基づくもので、安全運転管理者を置いて自動車の安全な運転に必要な業務を行う。制度の目的はよく似ているが、「運行管理制度」は車両運行をシステムとして捉えているのに対し、「安全運転管理者制度」はドライバー個人にアプローチをする。ともに、目指す方向は同じだが通る道が違うということである。
運行管理者のおもな仕事は、「ドライバーの勤務時間などを適正に管理する」「点呼などでドライバーの健康状態を把握する」「ドライバーに対する指導監督する」というように定められているが、もう少しわかりやすく解説すると以下のようになる。
・車両管理
車両の点検内容や、定期的な台数の確認を行う。車両に何らか問題や異変があった場合、その原因を調査して対処する。
・安全管理(一部、安全運転管理者の業務と重複する)
ドライバーの健康状態を把握し、疾病・疲労・睡眠不足などで安全運行支障があると考えられる場合は、乗務させないなどの措置をとる。また、長距離運転・夜間運転などで安全運行が難しいと考えられる場合は、交代ドライバーを配置するなどの対策を行う。事故を防止するために講習やトレーニングを実施して、ドライバーのスキルや安全意識の向上を図る。安全管理は運転中だけではなく、荷物の積み込み時についても配慮が必要で、積載方法や過積載の防止などについて指導や監督をする。
・労務管理(一部、安全運転管理者の業務と重複する)
乗務前後は対面点呼を行い、ドライバーに対して出退勤・健康状態・アルコール検査・睡眠状態・免許証の携帯・身だしなみなどをチェックする。点呼結果は記録し、それを適宜確認することで、ドライバーの労働時間や残業時間を把握し、過労運転の防止につなげる。また、睡眠・休息が可能な施設を把握してドライバーに休息を促すほか、残業時間や労働時間をチェックして、それに見合った報酬が受けられるようにサポートを行う。
・配送ルートの管理
ドライバーの健康面と効率的な配送・納期遵守のため、適切な配送ルートを選択する。ルートは安全面にも配慮が必要なので、悪天候や道路工事が行われているといった場合などでは、臨機応変にルート変更の指示を行う。
・スケジュール管理
納期や運行スケジュールについてはスムースに業務が遂行できるように立案するが、それはドライバーの適性に応じたスケジュールでなければならない。乗務割では、連続運転時間は4時間を超えないようにする(430休憩)ことや、1日に継続して8時間以上の休息をさせるなどといった労働基準を十分考慮する。
このように、運行管理者はドライバーや車両の動向・状況を把握し、安全を確保するための高度な判断力と、適切な指示を行う優れた指導力が求められる職務なのである。そのため、試験に合格するか定められた実務経験をもたなければ、資格者証を受けることができない。試験の合格率は「貨物」「旅客」ともに35%程度で難関だが、やりがいの面からも挑戦する価値はありそうだ。