この記事をまとめると
■自宅から駅やバス停、また駅やバス停から会社・学校までの移動手段を「二次交通」という
■二次交通の手段として増えているのが自転車や電動キックボードのシェアリングだ
■交通空白地ではシェアリングも事業として成り立ちづらく、公共ライドシェアが注目されている
ラストワンマイルの移動手段をどうするか
自動車メディアにはあまり出てこないのに、モビリティ全般を取り上げる場ではよく見るフレーズはいくつかある。二次交通はそのひとつだろう。
なぜ自動車メディアではあまり見かけないかというと、公共交通に関する言葉だから。二次があるということは当然、一次交通もあって、鉄道やバスなど、昔からある公共交通のことを一時交通という。では二次はというと、自宅から駅やバス停まで、駅やバス停から会社や学校までの移動手段のことになる。
クルマ(ここではマイカーのことを指す)や自転車はドアtoドアの移動ができるので、一次二次というわけ方は必要ない。ただ、いまはクルマでの移動がメインという人も、学校に通っていたころは、家から最寄駅まで自転車に乗っていったりしたかもしれない。
このように、鉄道やバスは、それだけでは移動のすべてをカバーすることができない。しかも家から駅までは自分の自転車が使えるけれど、駅を降りてから目的地までは、多くの人は手もちの移動手段がないので、徒歩では厳しいときはタクシーなどに頼ることになる。ただタクシーは料金が高いし、1kmぐらいだったらタクシーは過剰に思える。
欧米ではこのぐらいの移動距離を「ラストマイル」と呼んでいて、クルマに依存しすぎることで地球環境が悪くなることを防ぐために重要とされている。その結果、最近増えているのが、自転車や電動キックボードのシェアリングサービスだ。
ただ、自転車などのシェアリングは、移動する人が多い大都市で成り立つサービスだ。1時間に1本ぐらいしか列車が走らず、乗り降りする人も10人ぐらいずつという駅では、車両の台数もポートの数も少なくなりがちで、そうなるとサービスとして使いにくい。
バスやタクシーも、そこまで移動する人が少なくなると、営業を続けていくことが難しい。実際にバスの減便やタクシーの撤退という話はよく耳にする。そこでいま、話題に上がっているのがライドシェアだ。
こうした地方の人々はマイカーが必需品で、ひとり1台という家もあるほど。移動のほとんどをマイカーで賄う。農家や職人さんなど、定時ではない働き方をする人もいる。
いままでも知り合いを乗せてあげたりしていたかもしれないが、何度もタダで頼むのは気が引けるだろうし、頼まれた方も「またかよ」という気分になって、人間関係にも影響してしまうかもしれない。
それなら知り合い同士であってもきちっと料金を支払って乗せてもらったほうがいいと、個人的には考えている。
4月から東京都内などでタクシー会社の運営により始まった「日本版ライドシェア」は知っている人もいるだろう。しかし、地方自治体ではそれ以前から、現在の公共交通に不満があり、タクシーさえ不足する公共交通空白地域で展開していた自家用有償旅客運送制度を発展させる形でのライドシェア導入を望む声が多かった。
その声に応える形で国では7月、これに「公共ライドシェア」という名前を与え、導入支援を積極的に進めることになった。自家用有償旅客運送は、もともと白ナンバーのマイカーで料金を取って他人を運んでいたので、内容的にはライドシェアと変わらず、わかりやすいネーミングを与えたともいえる。
ゆくゆくは自動運転の移動サービスが実用化されるかもしれないけれど、当面は都市部では自転車などのシェアリングサービス、地方では公共ライドシェアが、二次交通を担うことになりそうだ。