普通&大型二種免許が「実地試験免除」になってから明らかにドライバーの質に問題が! 働き手不足と安全面のジレンマに陥るタクシー&バス業界 (2/2ページ)

新人の育成が不十分になりつつある

 バス業界でも、新人を養成運転士として入社させ、大型二種免許を取得させるのだが、そもそも大型一種免許をもっていないなか、養成乗務員となる人が目立つところはタクシーと少々異なるだろう。働き手不足が深刻になるなか、やはり運転士確保最優先ということが、実地試験免除導入後は目立つようになっていることは否めない。

 もちろん、いまでも試験場一発受験はできるのだが、養成乗務員となれば免許取得にかかる費用だけではなく、養成期間中も日当が支給されるなどするので、いまでは養成乗務員となり二種免許取得をめざすケースが多いようだ(取得にかかった費用は一定期間運転士として働けば払わなくて済むが、一定期間を満たさずに辞めると払う必要が発生することがほとんど)。

 一種と二種免許の違いを明確に答えられる人は少ない。

 ただ、わかりやすくいうのであれば、より広範な危険予測視野をもちながら、乗客への目配りも忘れない運転を心がけるのが二種免許取得者の運転心得といっていいだろう。一種免許所持者でどんなに運転技術が高くても、一発受験のころはなかなか二種免許の試験を合格できない人もいたと聞く。運転技術は一種免許を取得してから変なクセがついてしまう人もいるが、技術的にはとくに問題があるわけではない。

 本来なら「二種免許取得者の心構え」のようなものが重要視されるなか、実地試験免除後はV字クランクなど二種免許に必要な技能面をクリアすればそれで合格といった風潮になっているのが現状のようにも見える。

 あくまで「二種免許だけを取得した」と現状を危惧する大手事業者のなかには、取得後の新人社内研修プログラムを充実させる動きも見せているが、中小や零細事業者となるとさまざまな面で余裕がなく、配属営業所の運行路線で気を付けるところなどを先輩運転士から教えてもらう程度で運転士デビューしてしまっていることも多いという。

 働き手不足という現状もあり、運行現場はとにかく余裕のない状況が続いている。本来なら現場でプロ意識を植え付けるといったことも大切なのだが、それをいまの事業者に要求するのはあまりに酷なことのようにも見える。また、新人運転士も、世代の違いもあり、上から目線の指導を嫌う傾向にある。技術面ならともかく、プロとしての心構えともなれば、いまの若手運転士からは「ウザ話」以外の何ものでもないだろう。

 二種免許は運転士になるための単なるパスポートのようなもの。本当のプロドライバーになるのには、その後、現場で自分が納得しながら会得したものを積み上げていく必要があるのだが、働き手不足が深刻になるなか、いまもなお年齢など取得要件の緩和は続いている。そのなかで、プロドライバーとして乗客の命を預かるといった心構えを持つといったことは、いまでも本人マターとなっている。それもあるのか、最近のバスにはさまざまな安全デバイスが装着されるようになっているのかもしれない(路線バスはまだまだ限定的だが)。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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