トヨタ・アクアが全盛時の4分の1しか売れていない! それでも「心配ご無用」な至極当然の理由 (2/2ページ)

数字で見るとじつはそんなに悪くなかった

 販売網の違いもある。初代アクアの時代は、トヨタでは販売系列によって取り扱い車種を区分していた。たとえばヴィッツはネッツ店、カローラシリーズは文字どおりカローラ店のみの取り扱いだ。ところがアクアは初代モデルから全店で販売していた。販売網が大きかったネッツ店で売るヴィッツと比べても、取り扱い店舗数は約3倍だから販売面で有利だった。それが2020年5月以降は、すべてのトヨタ車を全店で扱っているため、アクアの優位性は薄れた。

 以上のような理由でアクアは売れ行きを下げたが、不人気車とは呼べない。なぜならハイブリッドというパワーユニットに限定して、トヨタのほかの小型車と売れ行きを比べると、現行アクアも決して少なくないからだ。

 小型/普通車の販売ランキングでは、カローラやヤリスが上位に入るが、これは複数のボディとパワーユニットを合計したシリーズ全体の数字だ。カローラシリーズでもっとも登録台数の多い車種はSUVのカローラクロスで、シリーズ全体の50%弱を占める。ハイブリッド比率は94%と高いが、2024年のカローラクロスハイブリッドの1カ月平均登録台数は約6400台だ。

 ヤリスでは、ハッチバックボディのヤリスとSUVのヤリスクロスがほぼ同等に売られている。この内、ヤリスのハイブリッド比率は約45%で、2024年の1カ月平均登録台数は約3000台だ。アクアの2024年1〜8月の1カ月平均登録台数は前述の4895台だから、じつはヤリスハイブリッドよりも多い。

 以上のように現行アクアの売れ行きは、初代モデルと比べると22%に留まるが、コンパクトなハイブリッド車では中堅から上位に位置する。今はトヨタのコンパクトな車種の大半にハイブリッドが用意され、人気のカテゴリーはSUVだからアクアのようなハッチバックは伸び悩む。そこまで考えると、アクアの売れ行きは妥当といえるだろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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