メキシコで「ダッジの新型」を見かけたら中身は「中国車」のOEMだった! 今後世界で「ステルス中国車」が増える可能性あり!! (2/2ページ)

メキシコで売られるダッジ・アティチュードは中国車ベース

 筆者は当時、レンタカーとして「おろしたて」の、走行距離が極端に少ないクライスラー200を運転する機会があったのだが、「クライスラー」車であることを感じさせないきびきびとした走りや、欧州車を思わせる足まわりをはじめとした性能に驚いた記憶がある。

 2025年モデルで新型となったダッジ・アティチュードもアルファロメオの血統なのかなと思っていたら、「GAC」という文字が地元メディアの記事のなかにあった。情報を集めていくと、新型アティチュードはGAC、つまり中国・広州汽車のモデルがベースになっているというのである。GACの傳祺(トランプチ)ブランドの「影豹(EMPOW/エムポウ)」がベースになっているとのこと。

 中国車ベースとはいえBEV(バッテリー電気自動車)ではなく、1.5リッター直4ターボに7速DCT(デュアルクラッチミッション)が組み合わされている。価格はSXTというグレードで39万9900メキシコペソ(約340万円)となっている。

 さらに調べてみると、すでにメキシコでラインアップされている最新型のダッジ・ジャーニー(クロスオーバーSUV)もGACのトランプチブランドとなる「GS5(中国ではフェイスリフト後GS4プラスに改名)」ベースとなっている。そして、アティチュード、ジャーニーともに中国で生産されメキシコへ輸入されている。

 広州汽車とFCAは、かつて中国で合弁会社を設立していた(いまは解消)。当時の広州汽車の自社ブランドモデルのなかには、当時のアルファロメオ車のプラットフォームを使っていたものもあった。その合弁会社では歴代ジャーニーも中国で生産されていた。つまり、メキシコにおけるアティチュードやジャーニーが広州汽車製になることはある意味、「なるべくしてなった」ともいえるのである。

 アメリカにおけるアメリカンブランドを見ると、GM(ゼネラルモーターズ)、フォードであってもすでに生産及びラインアップを売れ筋となるクロスオーバーSUVと小型ピックアップトラックに絞り込んでいる。

 フォードで乗用車はすでにマスタングしかなく、GMでもキャデラックブランドにはいくつかセダンが残っているが、そのほかのブランドでも、総合ブランドの強いシボレーでさえ、ハッチバック車はなく、FFセダンのマリブ(カムリクラス)、そしてコルベットのみとなっている。

 クロスオーバーSUVは数多くラインアップしているが、なかには「GMコリア」、つまり韓国製のモデルも目立っている(ビュイックブランドでも目立っている)。この傾向はクライスラーでも同じで、ピックアップトラック系のラムやジープはもちろんセダンなどはなく、クライスラーやダッジでもセダンといえば、マッスル系のダッジ・チャージャーぐらいとなっている。

 そこまで生産を絞り込むほど、アメリカではすでにクロスオーバーSUVとピックアップトラックがものすごい勢いで売れている。アメリカ市場でハッチバックやセダンをフォローしているのは、日本、韓国、欧州系ブランドとなっているのが現状である(別の目で見ればこのようなカテゴリーは外資ブランドにニーズが集中しているともいえる)。

 今後はクライスラーだけではなく、GMなら上海汽車、フォードなら長安汽車といった、中国国内で合弁会社のパートナーとなっているブランドのセダンやハッチバックを、シボレーやフォードブランドで再ラインアップしていくかもしれないと筆者は気になっている。そこまでいかなくとも、プラットフォームなどメカニカルコンポーネントをパートナーの中国メーカーから供給を受け、自社ブランドのクロスオーバーSUVを開発していくかもしれない。

 最近の中国車はBEVだけではなくHEV(ハイブリッド車)も数多くラインアップしている。HEV人気の高まっている北米市場では、中国メーカー製HEVを即導入することもできるが、いまの米中関係をみると話はそんな簡単なものともならないようである。

 単純に自社ブランドで海外市場に攻め入るだけではなく、そしてBEVだけではなく世界市場において気がつくと中国車が入り込んでいる。そんなことが世界各国で顕著になっていきそうである。

 日本市場も長い目で見れば、少子高齢化が進むこともあり、新車販売市場の縮小には歯止めがきかない。人の手を使う作業が減っていったとしても、自動車製造関係に携わる働き手不足も際立って改善されることはまず期待できない。そのような市場変化が際立ったときに、日本ではいまのメキシコのような状況を対岸の火事のような出来事として片付けることができるのだろうか。ちょっと心配になってしまった。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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